2021 Fiscal Year Research-status Report
胎児期に移入する母由来細胞集団の解明とその生物学的意義の探求
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21K19254
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
入江 直樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (10536121)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | マイクロキメリズム / 母由来細胞 / キメラ |
Outline of Annual Research Achievements |
我々ヒトを含む有胎盤哺乳類では、胎児期に母親の細胞(母由来細胞)が移入し、出生後も生涯にわたり全身の臓器組織に残り続ける。この母由来細胞は、免疫寛容や組織再生、さらには炎症性先天異常疾患の発症・悪化といった多様な生体内現象への関与が示唆されてきたが、何がきっかけで異なる現象に結びつくのかは不明である。従来研究では、個別の細胞種をターゲットとして免疫系の細胞や幹細胞などが含まれることがわかっていたが、そうした細胞が胎児に移入する母由来細胞集団のうちどの程度の割合を占めるのか、数は個体によってことなるのかといった知見は得られていなかった。そこで本課題では、移入する細胞の数・種類や分布が個体によって異なるという仮説をたて、まずは母由来細胞の数や細胞種が個体間で異なるかどうかを調べる。そして得られた結果から、母由来細胞の数や細胞種レパートリーの違いが上述の多様な現象に関与している可能性を考察する。 本年度は、GFPマウスを用いて母由来細胞のみGFP陽性とした母由来細胞検出系を立ち上げ、その単離、さらにはそれら細胞をsingle cell RNAseq (scRNAseq)解析にかけることに成功した。今年度の成果として、健常なマウスでも個体間に相当な細胞数の差が生じうることを報告した。scRNAseqデータについては、現在まだ解析中ではあるものの、解析のあかつきには、母由来細胞がどのような細胞種レパートリーから成るのかという疑問が初めて解明されることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
母由来細胞は胎仔内での頻度がそもそも非常に低く、PCRでの頻度推定はよく行われてきたものの、フローサイトメーターによる全胚からの単離は困難を伴うことが予想された。しかも、母由来細胞は胎仔移入後に分化する可能性も想定されたため、今回はなるべく移入早期(E14.5)の母由来細胞集団をターゲットとしたことから、細胞での単離は困難を極めることが予想された。しかし、試行錯誤しながらも実験系を改善することで今回首尾よく単離することに成功し、scRNAseq解析までこぎつけることができたことは、重要な技術基盤となるだけでなく、今後の研究に大きなはずみとなることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は得られたscRNAseqデータから、母由来細胞種の推定を行う。これには、すでに公開されている大規模scRNAseqデータを参照するなどして推定を行う予定である。 また、生後の母由来細胞の役割が未解明であるため、出生後の胎仔から母由来細胞を除去した際にどういった現象が起こるかなどについて表現型解析を進める。 また、今回健康な胎仔間でも相当数の母由来細胞数のばらつきが存在しうることが判明したため、その数の違いを生み出す仕組みの解明についても取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
2720円という金額に合う目的に応じた消耗品等の購入ができなかったため、次年度に持ち越した。使用計画としては、今年度予算と合算して研究に必要な消耗品を購入予定である。
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