2022 Fiscal Year Research-status Report
Studies of cytoplasmic freezing in land plants
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21K19256
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐藤 良勝 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任准教授 (30414014)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞骨格 / 環境応答 / オルガネラ |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は動物のように動きまわることはできない。また、動物では発生過程において細胞の位置関係も大きく変化するが、周囲を細胞壁に囲まれる植物細胞においてその位置関係を変えることもない。一方、植物は目まぐるしく変化する環境に耐える巧妙な応答能を獲得している。植物個体は動くことができないが、植物細胞内では原形質流動とよばれる細胞質内で顆粒状の物質ないしはオルガネラが流れるように動く現象が知られている。原形質流動速度は植物個体の成長にも影響を与えることが知られ、生理学的な重要性が理解されつつある。また、その運動機構は、動物の筋肉収縮の機構とよく似ていて、ATPをエネルギー源とし、細胞骨格であるアクチン上をモータータンパク質のミオシンが動くことによって生じることが知られている。一方、葉緑体は葉緑体アクチンと呼ばれる独自の運動系を備えることもわかっている。我々は、原形質の動きが環境刺激によって一定時間停止する現象を発見した。そこで本研究では、モデル植物ヒメツリガネゴケを用いてサイトプラズミックフリージング現象を解析してきた。これまでに細胞核、葉緑体にサイトフプラズミックフリージング現象が誘発されることを確認している。また、細胞膜、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体、ペルオキシソーム、液胞についても、サイトフプラズミックフリージング現象が誘発されるかを検証するため、蛍光タンパク質を融合させたマーカーラインを作出した。また、細胞骨格、カルシウムイオンシグナリングの関与を調べるため、細胞骨格である微小管、アクチン繊維、カルシウムセンサーの蛍光ラベル化株を作成した。以上についての株は、実際にそれぞれ目的の局在を示すことを確認の上、サザンブロットを行うことにより利用株の特定を行った。一方、解析システムについては、多色多検体同時イメージング装置ならびに動態追尾イメージング装置をセットアップした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サイトプラズミックフリージング現象は、当初切断した刺激によるストレス応答現象かと考えられた。そこで、本研究において、発生初期のプロトネマ細胞や、その後に発生する茎葉体細胞においてを調査したところ、無傷のプロトネマ細胞、茎葉体細胞においてもサイトプラズミックフリージング現象が誘導されることがわかった。今後の解析のため、細胞膜(LTI6b配列)、ミトコンドリア(L137P1-mito配列)、小胞体(HDEL配列)、ゴルジ体(Man配列)、ペルオキシソーム(SKL配列)、液胞(VAM3配列)についての蛍光タンパク質融合マーカー株はほぼ全て作出した。また、細胞骨格マーカー株についても、アクチン繊維(Lifeact配列、talin配列)、微小管(α-tubulin配列、CKL6配列)、さらに、アクチン繊維、微小管二重可視化株についても作出した。さらに、多色多検体同時イメージング装置ならびに動態追尾イメージング装置を独自にセットアップした。一方、サイトプラズミックフリージング現象の植物育成との関わりについては調査が遅れており、延長申請を行った次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
サイトプラズミックフリージング現象は、現在までのところ核と葉緑体でのみ検出できているが、その他のオルガネラについては分かっていない。そこで今後は、細胞膜(LTI6b配列)、ミトコンドリア(L137P1-mito配列)、小胞体(HDEL配列)、ゴルジ体(Man配列)、ペルオキシソーム(SKL配列)、液胞(VAM3配列)を蛍光ラベルした株を用いて、葉緑体、細胞核以外のオルガネラ動態をライブイメージング解析する。また、細胞内の動態を制御する機構として、細胞骨格との関わりが想定される。そこで、アクチン繊維(Lifeact配列、talin配列)、微小管(α-tubulin配列、CKL6配列)を蛍光ラベルした株を用いてサイトプラズミックフリージングに伴う細胞骨格動態のライブイメージング解析を行う。これらの解析については、独自にセットアップした、多色多検体同時イメージング装置ならびに動態追尾イメージング装置を用いて、多検体同時長時間イメージングを行う予定である。さらに、サイトプラズミックフリージング現象の植物生育度との関わりについて調査を行う。
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Causes of Carryover |
本研究を推進するために必要な植物育成用の卓上人工気象機の納期が大幅に遅れる見込みとなり年度内発注を取りやめざるを得なかったため、次年度使用が生じた。サイトプラズミックストリーミング現象人工気象機内で誘導することが可能であるため、本装置を用いてサイトプラズミックフリージング現象の植物生育度との関わりについて調査を行う予定である。
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