2021 Fiscal Year Research-status Report
リン脂質輸送体が統御するフリップ・フロップスイッチ機構の理解深化
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21K19259
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
原 雄二 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (60362456)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永森 收志 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (90467572)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | リン脂質 / フリップ・フロップ / 膜タンパク質制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者がこれまでに提唱した仮説「フリップ・フロップ スイッチ機構(形質膜の脂質二重層の内・外層間でのリン脂質のトンボ返り運動フリップ・フロップが、イオンチャネルをはじめとした膜タンパク質の機能を制御する)」について、その概念の発展・深化を目的とする。生体膜の構成成分であるリン脂質は、細胞構造のみならず膜タンパク質の構造や活性制御に関与することは古くから論じられてきた。我々は、脂質二重膜の内層・外層間で、脂質分子が脂質輸送体により輸送され、リン脂質分子が内・外層間で不均一に局在する現象に興味を抱いてきた。これまでに、特に膜張力で活性化されるイオンチャネルPIEZO1を研究題材とし、PIEZO1が生体膜のリン脂質分子のフリップ・フロップにより活性制御され、物理的な力を化学的なシグナルへと伝達し、特異な細胞応答を惹起することを明らかにした。一方で脂質分子の微細な挙動変化が、多様な細胞現象をいかに統御するのか、その分子機構の全容は未だ明らかではない。 そこで本研究では、」リン脂質フリップ・フロップにより活性制御される膜タンパク質群の同定・解析」について研究を進めてきた。特にイオンチャネル群のうち、種々環境変化により活性制御される因子について着目した。その結果、候補としてTRPイオンチャネルの一つが候補であることを見出した。このイオンチャネルは化学的アゴニストだけでなく、温度などでも活性制御されることから、その制御機構についても解明を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、リン脂質フリップ・フロップにより活性制御される因子の同定に成功するとともに、その活性を測定する系の構築を行った。特にカルシウムイメージングだけでなく、イオンチャネル活性そのものを評価するために電気生理学的解析の構築にも成功した。一方で、イオンチャネル活性を考慮するうえで、化学的なアゴニストだけでなく、生理学的な活性化因子を考慮する必要がある。その系の構築にもめどがたっており、次年度での学会および論文発表を見込んでいる。 またリン脂質フリップ・フロップを制御する因子の同定についても、実験を進めつつある。特にリン脂質のうち膜内葉に多く存在する脂質について、外層に露出する分子の検出系の構築も成功している。さらに同定された因子群(イオンチャネル、脂質制御因子など)について、遺伝子改変マウスの作出を目指し、iGonad法の習熟を行った。次年度でのプロテオーム解析についても共同研究者の永森博士とも綿密に準備を進めている。以上の観点より、本申請研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後について、同定されたイオンチャネル群についてその機能解明を進める。環境変化に伴う電気生理学的解析についても、実験系は立ち上がっており、イオンチャネルの変異体を用いることで、脂質分子の動態を感知するアミノ酸領域の同定も試みたい。 リン脂質フリップ・フロップを制御する因子群の同定について、スクリーニング解析を進める。リン脂質のうちホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)が内層から外層に露出する系に着目し、その制御因子の同定を行う。同定された因子群について、分担者の永森博士と協働でプロテオーム解析を行う。同定された因子についてiGonad法による遺伝子変異マウスの作出およびその解析を行うことで、リン脂質フリップ・フロップの分子機構およびその生理的意義解明を目指したい。
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Causes of Carryover |
当初の実験計画と比較して想定よりも進展があり、実験費用が予想よりも節約できたため。一方で次年度はスクリーニング解析を行うこと、さらにiGonad法による遺伝子改変マウスも作出することで、想定よりも高額の支出が見込まれることから、それらの支出へと充当する。
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