2021 Fiscal Year Research-status Report
真の性決定遺伝子Sry-Tよる性決定の転写制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K19262
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
黒木 俊介 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (50735793)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
Keywords | 性決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
転写因子が標的遺伝子を活性化または抑制する際には、各々が標的に応じた適切な結合パートナーと複合体を形成することが重要である。ほ乳類Y染色体上の遺伝子Sryは、雄への分化を誘導する性決定のマスター転写因子である。種の保存という観点からSryは最も重要な転写因子のひとつである。しかし、1991年にSryが発見されてから約30年が経つにも関わらず、Sryが雄分化を誘導する際の機能的な結合パートナーは未だに同定されていない。本研究では、真の性決定遺伝子Sry-T が形成するタンパク質複合体を近依存性Biotin標識法で同定し、Sry-Tによる性決定の転写制御メカニズムの解明することを目的とした。今年度は、近依存性Biotin化酵素をSry-Tに融合したノックインマウスをゲノム編集により作出した。最初に、最も活性の強い近依存性Biotin化酵素であるTurboIDをSry-T遺伝子CDS末端にノックインしたマウスを作製した。しかしこのマウスのF0世代個体は雄から雌への性転換の表現型を示し、F1世代の個体を得ることができなった。TurboIDの酵素活性が強すぎたことに性転換の原因があると考え、次に比較的活性がマイルドなBiotin化酵素AirIDをSry-T遺伝子座にノックインしたマウスをSry Tgをもつ遺伝的背景で作製した。結果、Sry Tg; Sry-T-AirIDマウスのF0世代の雄を取得できたことから、現在このマウスを元にSry-T-AirIDのマウス系統樹立を試みている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初作製を予定していたSry-T-TurboIDマウスが予想外に性転換表現型を示したため、このマウス系統の樹立ができなかった。対応策としてビオチン化酵素をTurboIDからAirIDに変更し、再度ノックインマウス作製を行ったため、当初の実験計画よりも進捗が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
Sry-T-AirIDのマウス系統樹立が成功した場合は、このマウスの胎生11.5日目の生殖腺にBiotinを添加し、Sry-Tと相互作用するタンパク質を網羅的にBiotin化させ、質量分析法によりBiotin化タンパク質を同定する。質量分析は徳島大学先端酵素学研究所・小迫英尊博士と共同で実施する。Sry-T-AirIDマウスの樹立ができなかった場合は、代替の実験としてSryT-TurboID発現ES細胞を樹立し、質量分析によりSry-Tと相互作用するタンパク質の同定を行う。得られた相互作用タンパク質リストを、申請者が既に取得している胎生11.5日生殖腺の遺伝子発現データと照合し、特に生殖腺に発現するクロマチン因子を候補として抽出する。次に絞り込んだ候補分子の遺伝子欠損マウスを作出し、染色体XYの個体が雌に性転換するか、すなわちSry-Tの雄分化誘導能が阻害されるかを調べる。性転換表現型が観察された場合、胎生11.5日目の生殖線を用いてSry-TのChIP-シーケンスとRNAシーケンスを行い、候補分子のSry-Tのゲノム上の局在や転写制御への寄与を明らかにする。一連の実験を通して、Sry-Tによる性決定の転写制御メカニズムの実体を解明する。
|
Causes of Carryover |
今年度に作製を予定していたSry-T-TurboIDマウスが予想外に性転換表現型を示し、マウス系統の樹立ができなかった。その結果、当初の計画よりも購入するするマウス費用と飼育管理費が少なくなり、次年度への使用額が生じた。次年度使用額は、代替案として作製中のSry-T-AirIDマウスの樹立と飼育に使用する。
|
Research Products
(1 results)