2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K19265
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
松井 貴輝 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (60403333)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 器官サイズ / 器官機能 / ゼブラフィッシュ / 左右差 |
Outline of Annual Research Achievements |
クッペル胞における機能補償は、以下のように起こると予想している。クッペル胞の形成過程において、まず、1-1)細胞の浸透圧や水輸送に関与する分子(CFTR、アクアポリンなど)が活性化され内腔が膨らむ。1-2)シリアが回転することで内腔に水流が発生する。2-1)水量が増えることで膨圧が細胞にかかる。2-2)水流によってシェアストレス発生する。3-1)膨圧で生じた力がメカノチャネルによって受容され、シグナルが活性化する。3-2)シェアストレスがメカノチャネルによって受容され、シグナルが活性化する。4)2つの反応の片方、または、両方により、水輸送、シリア回転速度が変化することで、適切な内腔サイズと水流速度に近づける。5)水流が弱くなりすぎたり、内腔が小さくなりすぎた場合は、再び、1が活性化され、サイズの違いを許容しつつ一定速度のノード流が発生するようになると考えている。 薬理学的な解析によって研究代表者は、力感受カルシウムチャネルTRPCの活性が阻害されたとき、機能補償されないという予備データを得た。また、上記モデルより、シリアの回転速度に影響を与える遺伝子群(アセチル基転移酵素ATAT1など)の関与が推察されたので、今年度は、CRISPR/CAS9システムを用いたゲノム編集を活用し、クッペル胞で発現するTRPC1、および、ATAT1ノックアウトを行なった。それぞれの遺伝子に対するgRNAを設計し、Cas9タンパク質と共にゼブラフィッシュの受精卵にインジェクションし、PCR-サンガーシーケンス法によって変異の有無を確認したところ、F0世代でゲノム編集が起こっていることが確認できた。そこでこのF0世代を成魚まで成長させ、生殖系列に変異が導入されているF0ファウンダーを同定した。さらに、フレームシフトにより完全長のアミノ酸が形成されない変異体(F1世代ヘテロ変異体)を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゼブラフィッシュでの変異体株の作製には、半年から1年程度の期間を要する。今回、候補遺伝子に対するgRNAで、効率が良いものを得ることができず、何度か再合成したため時間を要したが、1年目の研究期間内に、2つの候補遺伝子に対する変異体株が作製できたので、本研究はおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
TRPC1、ATAT1のヘテロ変異体同士を交配し、得られたホモ変異体で、クッペル胞の内腔の大きさ(水量)、細胞数、水流、シリアの回転、機能(心臓や内臓の配置)を調べることで、候補遺伝子が機能補償作用の堅牢さに影響するかについて解析する。また、TRPC1、ATAT1変異体が通常発生するときだけでなく、フェムト秒レーザーを用いた非熱的な細胞アブレーションによって細胞数を減少させたとき、一連のパラメーターがどのように変化するかを解析することで、候補遺伝子が機能補償作用の堅牢さに影響するかについても解析する。これらの通常発生胚、および、クッペル胞細胞減少胚から得られた定量データをもとに数理モデルを構築し、機能補償のしくみの理解を目指す。
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Causes of Carryover |
ノックアウトゼブラフィッシュを作製する際に必須のインジェクターを購入予定であったが、修理して使えるようになったため、その購入費用が次年度使用額として残った。現在、インジェクターについては使用可能な状況ではあるが、ゼブラフィッシュの飼育システムが不足していて、実験を制限している状況になっている。今年度の研究を加速させるには、新規飼育システム(280万円程度)を購入する必要があると考えており、今回生じた次年度使用額と今年度の予算を合算して導入したいと考えている。
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Research Products
(6 results)