2021 Fiscal Year Research-status Report
近縁種交配体ゲノムによる植物個体死の定義および制御系の理解
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21K19266
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
伊藤 寿朗 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (90517096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 七夕子 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (50379541)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 植物幹細胞 / 一年草 / 老化 / 個体死 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は、動物と比べて強い幹細胞増殖能を持ち、環境ストレスに対して非常に強い回復力、再生能力を持つため、植物にとっての「個体死」は、はっきりと定義されていない。本提案では、一年草と多年草の茎頂と腋芽分裂組織に着目して、多年草の腋芽分裂組織が「死なない仕組み」とその他の分裂組織が開花結実後に「死ぬ仕組み」を明らかにすることで、個体死に至る制御系を解明し、植物の個体死そのものを再定義することを目的としている。まずは、一年草であるシロイヌナズナの茎頂が死ぬ機構解明を進めた。時間軸に沿ったシロイヌナズナ茎頂のトランスクリプトーム解析を行い、活性酸素種関連遺伝子の発現が茎頂幹細胞の加齢にともない変化し、プログラム細胞死関連遺伝子が誘導されることを見いだした。トランスクリプトームデータと呼応して、活性酸素種であるROSのうち、過酸化水素の量がシロイヌナズナの茎頂部において加齢に伴い上昇すること、同時にフリーラジカルである超酸化物―スーパーオキシドアニオン量は減少することを見いだした。さらに過酸化水素の外的な塗布により幹細胞の決定にかかわる遺伝子の発現が抑制されることを見いだした。また、幹細胞が異常増殖する突然変異体においては、幹細胞の加齢と死のプロセスが遅れることも見いだした。これらのデータに基づいて、一年草シロイヌナズナの茎頂における活性酸素シグナル系が幹細胞のプログラム細胞死を制御しているモデルを提案し、論文として発表した (Wang,Y.et al. 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
一年草シロイヌナズナの茎頂における活性酸素シグナル系が幹細胞のプログラム細胞死を制御しているモデルを提案し、論文として発表した (Wang,Y., Shirakawa, M., and Ito, T. International Journal of Molecular Sciences, 23, 3864. doi.org/10.3390/ijms23073864, 2022)。また、幹細胞の終結過程、終末分化、環境からのインプットなどについての論文をPNASE (118, e2102826118, doi:10.1073/pnas.2102826118, 2021), NATURE COMMUNICATIONS (12, 3480 doi: https://doi.org/10.1038/s41467-021-23766-w, 2021)誌などに報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、これらの経路が多年草ミヤマハタザオにおいてどのように制御されているのか、活性酸素シグナルがどのように幹細胞の決定因子の発現に作用するのかの制御機構を解析する。萌芽研究として、一年草と多年草の茎頂と腋芽分裂組織に着目することで、多年草の腋芽分裂組織が「死なない仕組み」とその他の分裂組織が開花結実後に「死ぬ仕組み」を明らかにする。
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Causes of Carryover |
分子遺伝学的解析、顕微鏡観察に必要とされる試薬や消耗器具の一部分を、新規購入することなく既存のストックでまかなうことができたため、計画より少ない 支出で結果が得られた。その分支出が予定より少なくなった。計画しているプログラム細胞死関連遺伝子の機能解析について、遺伝子組換え体の作成および、さらなる網羅的な遺伝子発現制御、特にエピジェネティックの解析には、多くの試薬購入を必要とする。特に、ChIP-seqアッセイでは、キットや抗体の購入が必要である。次年度使用額は、その実験に関する試薬購入や論文作成の費用などにあてる。
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Remarks |
SSHラボステイの受入:2021年8月4日(水)- 6日(金) 3日間 国際会議”INTEGRATIVE EPIGENETICS IN PLANTS”をメインオーガナイザーとしてオンライン開催:2021年12月14日(火)
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