2022 Fiscal Year Annual Research Report
リボソームによる単細胞生物から多細胞生物への形質転換
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21K19271
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
太田 訓正 九州大学, 基幹教育院, 教授 (90244128)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅 裕 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (30734107)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | リボソーム / 単細胞生物 / 多細胞生物 / 形質転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、乳酸菌をヒト線維芽細胞に取り込ませると、宿主細胞が形質転換される現象を世界に先駆けて報告した。その後、古くからタンパク質合成装置と考えられてきたリボソームが、形質転換の物質実体であることを突き止めている。 5界説とは、右図のように全ての生物を5つの界に分ける考えである。原核細胞から真核細胞への移行は、真核細菌が古細菌に感染した細胞内共生説により説明でき、申請者はこの移行を担っているのはリボソームであると考えている。一方、単細胞生物は同じ種類の細胞しか作らず、多細胞生物は様々な種類の細胞を作ることから、単細胞生物から多細胞生物への進化は、一つの細胞が異なった種類の細胞を作り出すことだと考えられるが、単細胞生物から多細胞生物への転換を説明でき得る説は存在しない。本申請では、リボソームを動物に近縁な原生生物(クレオリマックス;ライフサイクルで単細胞と多細胞形態の両方をとる生物)に導入し、単細胞生物から多細胞生物への転換を実験的に再現し、多細胞生物進化の基本原理を明らかにすることを目的とした。 Creolimaxを栄養分を全く含まないリン酸バッファーで培養し、リボソームを培養液中に添加した。数ヶ月後ほど培養を継続すると、線維芽細胞にリボソームを取り込ませたような細胞塊が形成された。Creolimaxがこのような嚢胞を形成する現象は今までに全く報告されておらず、この結果は、リボソームの形質転換機能によるものだと考えられる。今後、動物に近縁なCreolimaxにリボソームを導入することにより多細胞生物の特徴(細胞分化、細胞骨格、細胞間連絡構造)を誘導できれば、リボソームの新たな機能的一面を実験的に解き明かすだけでなく、多細胞生物進化の基本原理のひとつを明らかにできる。
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Research Products
(1 results)