2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K19276
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
古川 史也 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (80750281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 亙 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (90755307)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 卵黄 / 代謝 / 糖質 / 脊椎動物 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、卵黄を用いた糖代謝が脊椎動物の進化の過程でどのように変化していったのかを、コチョウザメ、ネッタイツメガエル、ウズラ、およびトラザメを用いて検討している。今年度は、コチョウザメ、ネッタイツメガエル、およびトラザメにおいて、糖質の合成(糖新生)に関与する遺伝子の発現を調べた。コチョウザメにおいては、卵黄を豊富に含む大型の細胞群が卵黄嚢に収容された状態で発生が進むが、この卵黄嚢の中で糖新生関連遺伝子群が発現した。その後、発生の進行とともにその発現部位は腸管および肝臓へとシフトしていった。ネッタイツメガエルにおいても、コチョウザメと類似の発現パターンが見られた。そして、両種ともに発生過程でのグルコースの増加が確認された。これらの結果から、卵黄を利用した、肝臓形成以前の糖新生が、脊椎動物においては真骨魚類に特有のものではないことが確定的となった。一方で、ネッタイツメガエルにおいては、いくつかの糖新生関連遺伝子が外胚葉(皮膚)において発現していることが分かった。これは、ゼブラフィッシュとコチョウザメのどちらでも確認されていない現象である。この意義を明らかにするため、現在、糖新生関連遺伝子が発現する皮膚の細胞サブタイプも調べている。 トラザメを用いた実験の結果、卵黄嚢、および胚体で発生中の肝臓の両方において、糖新生に関連する遺伝子の発現が確認された。板鰓類の卵黄嚢には真骨魚類に見られる卵黄多核層(YSL)と類似の組織、およびそれを取り巻く内胚葉(腸)が重なっており、これらのどちらに目的の遺伝子が発現しているのかを、今後は検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、あらかじめ真骨魚類で確認された現象を、脊椎動物門に属するのいくつかの動物で検討し、比較するものである。そのため、既に利用できる実験系を他の動物に応用することが主な研究の流れであり、これまでは大きな問題もなく進んでいる。一方で、飼育している動物(ネッタイツメガエルおよびトラザメ)の産卵が不安定になることは想定できるため、予備実験用のサンプルを本実験と同時に取得する等、常にリスク管理を行い、研究を止めずに進行するよう注力している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、トラザメの卵黄嚢および胚体内における代謝物の量をLC-MSにより測定するとともに、トラザメとネッタイツメガエルにおいて、発生過程における糖代謝関連遺伝子の発現量の定量を行う。更に、安定同位体13Cをトレーサーとして用いた代謝活性の測定も予定している。 また、今年度からウズラを用いた実験を行う。当初はニワトリを使用する予定であったが、小型の卵を生むウズラの方が本研究に適していると判断した。ウズラのサンプルは名古屋大学の鳥類バイオサイエンス研究センターから供与していただく予定であり、現在、当方の所属機関との間でMTAを締結すべく進行中である。ウズラにおいては、まずいくつかの発生段階において卵黄嚢と胚体を分離する実験を行い、さらにLC-MSを用いた代謝物の測定、およびin situ hybridizationに用いるためのプローブ作成を行う予定である。
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Causes of Carryover |
今年度のトラザメを用いた実験はすべて予備的なものであり、サンプルの準備や実験にかかるコストが当初の予定よりも大幅に抑えられた。一方で、次年度以降にトラザメの本実験が全て持ち越されたため、今年度の予算を一部、繰り越して使用する予定である。
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