2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K19282
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
得津 隆太郎 京都大学, 理学研究科, 特定研究員 (60613940)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 概日リズム / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成反応は、地球生命を支える重要な生物反応である。しかし、自然界のような動的な光環境において光合成がどのようにして調整・最適化されているのか、その本質は未だ理解されていない。光合成に関わる主要機構である、積極的に光を利用する光捕集と過剰な光を消去する光防御は、それぞれの分子機構についての理解は進んでいるものの、それらの機能制御についての分子基盤は不明である。 本研究では、光捕集・光防御の機能制御メカニズムの理解を目標とし、現在得られている予備的結果を足がかりにして概日リズムと光合成(光捕集・光防御バランスの制御)の間に存在するシグナル伝達機構の解明を試みる。 本年度の実績として、概日リズム異常を示す変異体の表現型を相補するための形質転換用コンストラクトの作成、および形質転換による相補ラインの作出に成功し、当該遺伝子の細胞内局在の観察までを完了した。これらに加えて、相補ラインに付与したエピトープタグを利用したクロマチン免疫沈降シーケンス(ChIP-seq)解析に向けた細胞破砕条件、ゲノム断片化条件の検討を行い、ChIP-seq解析への準備が完了した。これに伴い、周期依存的なChIP-seq解析およびmRNA-seq解析の実施まで完了した。現在、ChIP-seqに関しては分析中、mRNA-seqに関してはシーケンス結果が得られたところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までは研究代表者の所属変更に伴い、申請時に予定していた実験に必要な機器類へのアクセス性が低く、効率的な研究遂行に支障が出ていた。具体的には、質量分析を利用した相互作用因子の同定作業が滞っており、現段階で光合成と概日リズムをつなぐ鍵となる因子の発見に至っていない。現在も質量分析についてはアクセスが確保できておらず、引き続き共同研究先や受託業者を探している。その一方で、ChIP-seqおよびmRNA-seqに用いる相補株の作出や、次世代シーケンスの実施までを進めることができたため、当初の計画とは若干の違いはあるものの概ね順調に研究が進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの進捗により、エピトープタグを利用したChIP-seq解析およびプロテオームによる網羅的な相互作用因子の同定へ向けた基盤が整備されており、このうちChIP-seqの実施まで完了している。今後は、ChIP-seqで得られるデータとmRNA-seqで得たデータを統合的に解析し、着目している転写因子が「どの遺伝子の発現を”直接的に”制御しているのか」を明らかにする。この解析によって抽出された因子について、変異体の作出および概日リズム表現型解析、光合成機能解析を進めることで、概日リズムの形成機構および、それに伴う光合成機能調節の分子基盤を解明する。
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Causes of Carryover |
先進ゲノム支援事業のサポートにより、研究代表者が取得していた変異相補株の概日リズム依存的なChIP-seq分析を達成することができた。また、mRNA-seqについては、本年度中に外部受注先に発注したが、分析完了が間に合わずに次年度に持ち越されることになった。そのため、mRNA-seq分析に必要な経費は次年度使用額に該当することとなった。
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