2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K19283
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
深見 真紀 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 分子内分泌研究部, 部長 (40265872)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞 / 遺伝子 / 性 / 液-液相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、液-液相分離(liquid-liquid-phase separation)など新たな観点から、性分化疾患の発症メカニズムの解明に挑むものである。本年度の成果には、下記の点が含まれる。(i) 46,XY性分化疾患原因遺伝子MAMLD1のタンパク構造上の特徴について検討した。これまでに性分化疾患患者で同定された病的バリアントの位置や既知ドメイン構造に基づき、タンパク局在や転写活性化能に影響を与える部位を明確とした。(ii)46,XX 精巣性性分化疾患患者1例においてSOX9新規ヘテロ接合性バリアントを同定し、in vitroレポーターアッセイでこのバリアントが転写活性化能亢進による性腺分化異常を招く可能性を見出した。なお、われわれは先行研究において、SOX9が生体内でLLPS顆粒を形成することにより標的遺伝子の転写活性化を行う可能性を見出している。一方これまでにSOX9変異が46,XY性分化疾患に関与することが知られているが、46,XX精巣性性分化との関連の報告は無い。本研究の成果は、性分化マスター遺伝子であるSOX9の機能異常による性分化疾患の新規発症機序解明につながる可能性がある。(iii) SRD5A2ホモ接合性性バリアントを有する中国人46、XX性分化疾患患者の内分泌学的解析から、5αレダクターゼ欠損症の新生児期の病態を明らかとした。また、この患者の詳細なゲノム解析により、SRD5A2にアジア人特異的創始者変異が存在することを見出した。現在、この変異体の機能解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はMAMLD1のタンパク構造について検討した。さらに、SOX9とSRD5A2遺伝子異常に起因する性分化疾患患者を同定し、その病態について解析を行った。これらの成果は、英文論文として発表した。これと同時に、LLPSが性分化疾患などの先天性内分泌疾患発症においてどのような役割を果たすか、これまでの知見を論文のシステマテイックレビューによって調査した。この結果をとりまとめ、英文総説として発表した(Akiba et al. J Endocr Soc. 2021)。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目1. 性分化関連因子のタンパク構造と局在解析:バイオインフォマティックス解析によって、MAP3K1やCBX2などの性分化疾患関連因子がLLPSに合致するタンパク構造上の特徴を有するか否かを明らかとする。次いで、ヒトおよびマウスのMLTC1やTM4細胞など性腺由来細胞株を用いて内在性タンパクの局在を決定する。さらに、パラスペックルやPML小体などLLPS顆粒のマーカーを同時に染色し、目的タンパクがこれらの構造物に存在するか否かを明らかとする。 研究項目2:性分化関連遺伝子変異が疾患を発症するメカニズムの解明:LLPS顆粒を形成することが判明した因子について、以下の検討を行う。性分化疾患患者を対象として網羅的変異スクリーニングを行い、疾患に関与するバリアントを同定する。同定されたバリアントを有する発現ベクターを培養細胞に導入し、LLPS顆粒への局在が変化するか否かを明らかにする。なお、われわれは蛍光タグをつけたSRY, SOX9, CBX2, MAMLD1、NR5A1の野生型遺伝子を包含するベクターを構築済みである。さらに、変異体導入細胞への薬剤刺激などの効果を検証する。多くの変異体タンパクのデータを集積し、液-液相分離顆粒への局在を決定するタンパク構造の特性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度、患者の変異解析を行って疾患関連バリアントを検出する計画であったが、新型コロナウイルス感染拡大のための医療機関受診者減少により、集積された検体数が予定より少なかった。そのため、2年目以降に計画されていたバイオインフォマティクス解析や細胞実験を行った。これにより、次年度使用額が生じた。2022年度は患者検体の集積が行える見込みである。
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