2021 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of infection routes of microorganisms to seeds by pollinator insects and its adaptive significance.
Project/Area Number |
21K19285
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
横山 潤 山形大学, 理学部, 教授 (80272011)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | 植物 / 種子 / 内生微生物 / 送粉昆虫 / 感染経路 / 垂直感染 / 水平感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物には内生微生物が多数存在し、植物の成長促進やストレス耐性付与に関わる共生生物として重要である。種子にも微生物が存在しており、作物では成長促進、病害抵抗性などの観点から研究されているが、野生植物における研究例は少ない。これらの微生物が野生植物の生存率や適応度の変化に関わるとすると、種子の微生物相の調査が必要になる。種子に感染する微生物は、親個体からの垂直感染の他、送粉昆虫による水平感染が予測されるが、この可能性は検証されていない。送粉動物が生存率や適応度の変化に関わる微生物を種子に感染させているなら、送粉昆虫の植物の生殖に果たす役割の考え方に新しい軸を加える重要な発見となる。そこで本研究では、開放花と閉鎖花の別のある一年生植物を研究対象として、野生植物における種子感染性微生物相を調査し、それらの適応度への影響を検討するとともに、野生植物の種子に感染する新たな微生物をリクルートする仕組みとして、送粉動物を介した花からの感染経路を検証する。 本研究では具体的には、①野生植物の種子に感染している微生物相の解析、②花蜜・花粉・送粉昆虫に感染している微生物相の解析、③感染実験による種子感染微生物相への送粉昆虫の効果の検証、④感染実験による植物の成長に与える微生物の効果の検証、を行う予定である。本年度は、対象植物であるコナギとヤハズソウについて、種子から培養可能微生物(バクテリア・真菌類)を単離し、分子同定を行った。単離株の同定は完了していないが、300株以上の培養株を得ており、中には植物の成育に正の影響を与える可能性のある微生物も見出されている。また、メタゲノム解析のデータも現在解析中である。コナギについては送粉昆虫(ハナアブ類)の観察と採集を行い、体表面からの微生物の単離、分子同定をおこなった。現在のところ、共通の微生物は見出されておらず、今後さらに同定を進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度実施を予定していた、種子および送粉昆虫からの培養可能な内生微生物の単離株確立については、コナギの種子と送粉昆虫、およびヤハズソウの種子でおおむね実施できた。目下同定を進めているところだが、培養可能な微生物については網羅的に単離できたと考えている。メタゲノム解析の結果も解析中だが、結果次第では追加解析を行うものの、培養法と比較可能な一定の成果が期待できる。コナギの開放花と閉鎖花の野外での区別が、結果時のみでは難しいという問題点が生じたが、今年度調査フィールドと調査法を確定したので、継続観察を行うことで解消可能である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度主に実施した微生物の単離・同定を、それぞれの種で継続する。未同定の単離株が多数あるため、これらの同定をまず優先的に進める。また、ヤハズソウについては送粉昆虫の微生物相が未調査であるため、野外における送粉昆虫の採集、同定と、それらからの微生物の単離同定も優先的に実施する。コナギについてはフィールドでの開花状況の継続観察を行い、開放花と閉鎖花の種子感染性微生物のより正確な同定を行う。また、次年度より開始する予定の感染実験に向けた植物の育成を行う。
|
Causes of Carryover |
ヤハズソウの送粉昆虫の微生物相の解析が行えなかったため、これに使用する予定であった経費が未使用となっている。
|
Research Products
(4 results)