2023 Fiscal Year Research-status Report
菌類のゲノムワイドな分子情報に基づく系統復元と研究領域拡大への基盤構築
Project/Area Number |
21K19286
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岡根 泉 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60260171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 義隆 茨城大学, 教育学部, 特命研究員 (90134163)
山岡 裕一 筑波大学, 生命環境系, 研究員 (00220236) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Keywords | Phyllosticta / インドネシア / MIG-seq法 / ハプロタイプ / 一塩基多型 / rDNA ITS |
Outline of Annual Research Achievements |
宿主広範性の内生菌であるPhyllosticta capitalensisの原産地が植物の多様性が高い熱帯地域であると仮定し、インドネシアにおけるP. capitalensisの遺伝的多様性と遺伝構造の評価を試みた。熱帯地域(インドネシア)、亜熱帯地域(南西諸島)、温帯地域(本州)から分離された377株について、まず、ITS領域塩基配列505-580 bpを決定し種の同定を行った。そして、本研究課題で菌類への適用を試みたMIG-seqによって見出された単相分離株358株のゲノムワイドなSNPデータを調査した。その結果、合計27のハプロタイプ(Hap)が低い塩基多様度(Pi=0.00241)で見つかった。AMOVAの結果では集団間の遺伝的分化が弱いことが明らかになった(PhiPT=0.195、P値=0.001)。ハプロタイプの多様性はインドネシアの2つの集団で高く、それぞれ16のハプロタイプと 9のハプロタイプが検出された。Hap 1が主要なハプロタイプで、それを中心とし、他のハプロタイプとは星型パターンを構成した。他のいくつかのハプロタイプは地理的地域との連関が認められた。Hap 9とHap 16はインドネシアの集団と他の熱帯地域に特異的であった。Hap 6とHap 12は日本の南西諸島に特異的であった。Hap 11は日本の温帯域の集団で検出された。さらに、SNPデータは系統樹に基づく明確な地理的クラスタリングを裏付けていた。主要なハプロタイプとして認められたHap 1は熱帯地域で生じ、その後亜熱帯地域や暖温帯地域に分散したことが推察された。そして、急速な分散がP. capitalensisの複雑な遺伝的多様化をもたらしていることが本調査から示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多様な植物に定着し汎存的な植物内生菌として知られるPhyllosicta capitalensis(子嚢菌類)の分離株377株に対してMIG-seq法を試用しSNP解析を行ったところ、27のハプロタイプが認められ、菌類の系統解析と集団遺伝学的解析に本法が適用できることが確認された。しかし、その一方で、当初、主要な研究対象としていたサビキン(担子菌類)へのMIG-seq法の適用については、プライマーの不適合が原因と思われるPCRの不調が確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
サビキンに対するMIG-seq法の適用については、PCR用プライマーの検討も視野に入れつつ、さらに新鮮なサビキンの採集サンプルについて検討を進めたい。その一方で、植物内生菌として分離されたPhyllosicta capitalensisについては、MIG-seq法に基づくSNP解析を進め、本菌の遺伝的多様性、宿主植物の違いを加味した本菌の系統関係と遺伝型の関連性、そして本菌の遺伝構造の解明を目指したい。
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Causes of Carryover |
調査対象菌の分離株について、異核共存株に加えて一核株もMig-seq解析を行い比較検討する必要が出たため次年度使用のため基金の一部を繰越すこととした。今後、MIG-seq法によって異核共存株と一核株から取得されたデータを比較検討しながら解析をさらに進め、成果報告を目指したい。
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