2022 Fiscal Year Research-status Report
Non-invasive monitoring of intra-brain drug concentration using near-infrared spectroscopy (chemical NIRS)
Project/Area Number |
21K19320
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田代 学 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (00333477)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 均 福島県立医科大学, 保健科学部, 教授 (00325292)
石川 大太郎 福島大学, 食農学類, 准教授 (20610869)
藤井 智幸 東北大学, 農学研究科, 教授 (40228953)
渡部 浩司 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (40280820)
松原 佳亮 秋田県立循環器・脳脊髄センター(研究所), 放射線医学研究部, 主任研究員 (40588430)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | 近赤外線分光計(NIRS) / 核磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS) / アセトアミノフェン / ジフェンヒドラミン / 薬物濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
近赤外線(NIR)を用いてアセトアミノフェンの粉末と水(H2O)を700~2400 nmの波長域において別々に測定したところ、アセトアミノフェン固有のバンドが多数確認されたため、物質の局在確認のためのNIRS測定の対象には十分になりうると考えられた。次に、アセトアミノフェンの粉末に水をドロップする方法でスペクトルの形状変化の観察を続けた結果、アセトアミノフェン固有のバンドの追跡は水溶液中でも可能であることが確認できた。次にアセトアミノフェン水溶液をサンプルとしてアセトアミノフェン濃度を1%~0.01%に可変して調べたところ、十分に検量可能であることを確認した。特に1850~1950 nm付近の波長が最も特徴的であり、この波長域で検量線を引くと十分に定量可能レベルであることが確認された(R2=0.999程度)。しかしながら、非侵襲的な脳測定に応用するには、人体組織の透過性が高いいわゆる「生体の窓」領域(700~1000 nm)の波長を対象にした再検討が必要と考えられた。追加的検討の結果、873 nm付近の波長域が測定に利用可能と期待された。アセトアミノフェン濃度が0.01%の場合にはこの波長域において水と差があることが認められたため、アセトアミノフェン濃度の定量は困難な可能性があるものの、アセトアミノフェン分子の存在の有無の判定には利用できる可能性があると考えられた。また、過去のMRSを用いた測定結果と比較したところ、NIRSを用いた方法のほうが若干高感度で測定できるものと推測された。 加えて、将来的に予定されているdeep learning手法に関連して、NIRS信号のノイズ除去・物質特定を行うための深層学習モデルについて、系列データに基づいたモデルを中心に最新の手法に関する調査を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、以前、MRSを用いて実施したヒト脳内の薬物濃度測定課題を、高感度が期待できるNIRSを用いて実施することを目指していた。昨年度は、文献を用いた検討を進めて、今年度は実際の測定を開始している。実際に測定を開始してみると技術的に困難な点もあり、アセトアミノフェンおよびジフェンヒドラミンの各ターゲット薬物(物質)に対応して測定可能な波長域の特定が難航していたため、若干進捗状況が遅れている。しかし、アセトアミノフェンに関しては測定に使用可能な波長域の特定が進んだため、今後は、deep learning用にサンプルデータを多数作成して、検量線を再構築していく計画である。当初計画していた以下のステップにおいて、現在は2)まで進んできている。 1)検出物質(消炎鎮痛解熱薬acetaminophenおよび抗ヒスタミン薬diphenhydramine)の原末のNIR測定を実施。 2)上記の検出物質(acetaminophenとdiphenhydramine)の水溶液のNIR測定を実施。 3)検出物質(acetaminophenとdiphenhydramine)の水溶液にヒト脳組織の組成に近い多様な物質を溶解した溶液および半固形にしたサンプルのNIR測定を実施。測定結果もMRSの結果とも比較検討。 4)深層学習を用いた解析手法も駆使して、得られた波形データから物質の特定が可能かどうかを検証。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、実施済みの核磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)で行ったヒト脳内薬物濃度評価を高感度の近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いて測定することを目指している。以前のMRS研究では、MRSの測定感度が不足したが、NIRSのほうが高感度であると期待されている。ヒトを対象としたNIRS測定では、組織中の酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)と還元ヘモグロビン(deoxy-Hb)の濃度をNIRS測定する手法がすでに臨床応用されており、両Hbの割合から脳血流の変化を推定する方法として確立されている。同様の測定を様々な脳内に分布した薬物で実施できれば世界的に貢献できると期待されており、測定方針を分担者間で再確認し、現在は実際の測定を進めている。 アセトアミノフェンに関しては、波長域の特定が進んだため、今後はdeep learningを用いた波形評価のために、濃度が同等のサンプルを多数作成して、検量線を再構築する計画である。すでにdeep learningを用いた波形の評価システムの調整はできている。引き続きジフェンヒドラミンの測定も続ける計画であるが、加えて、NIRSを使用した場合とMRS使用の場合の測定感度の比較検討なども行う予定である。 加えて、この測定技術を応用する際に重要と思われる測定対象についても議論を進めている。経口服用した薬物が脳内に分布する状態を測定するよりも高感度で測定できるのではないかと期待しうる測定対象の一例として、健常高齢者およびアルツハイマー病等の認知症患者のヒトの脳内に生成・沈着するβアミロイド蛋白の非侵襲測定も重要と考えられた。引き続き情報収集と検討を続け、実行性がありそうであれば、βアミロイド蛋白に関する基礎測定を行うことも念頭において研究を推進していきたい。
|
Causes of Carryover |
本研究では、以前、MRSを用いて実施したヒト脳内の薬物濃度測定課題を、高感度が期待できるNIRSを用いて実施することを目指していた。昨年度は、文献を用いた検討を進めて、今年度は実際の測定を開始している。実際に測定を開始してみると技術的に困難な点もあり、アセトアミノフェンおよびジフェンヒドラミンの各ターゲット薬物(物質)に対応して測定可能な波長域の特定が難航していたため、若干進捗状況が遅れている。しかし、アセトアミノフェンに関しては測定に使用可能な波長域の特定が進んだため、今後は、deep learning用にサンプルデータを多数作成して、検量線を再構築していく計画である。 当初計画していた以下のステップにおいて、現在は2)まで進んできている。 1)検出物質(消炎鎮痛解熱薬acetaminophenおよび抗ヒスタミン薬diphenhydramine)の原末のNIR測定を実施。2)上記の検出物質(acetaminophenとdiphenhydramine)の水溶液のNIR測定を実施。3)検出物質(acetaminophenとdiphenhydramine)の水溶液にヒト脳組織の組成に近い多様な物質を溶解した溶液および半固形にしたサンプルのNIR測定を実施。測定結果もMRSの結果とも比較検討。4)深層学習を用いた解析手法も駆使して、得られた波形データから物質の特定が可能かどうかを検証。
|
Research Products
(2 results)