2022 Fiscal Year Research-status Report
大規模ゲノム再編成を基盤とする革新的天然物創製法の開発
Project/Area Number |
21K19324
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浅井 禎吾 東北大学, 薬学研究科, 教授 (60572310)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 天然物 / 糸状菌 / 休眠遺伝子 / 生合成 / ゲノム再編性 |
Outline of Annual Research Achievements |
糸状菌のゲノム上には数十もの天然物の生合成を司る遺伝子クラスターが存在する。それらの多くは通常の培養条件下では発現が抑制されている休眠型遺伝子クラスターである。これらの発現を誘導しコードされる天然物を生産させることができれば、これまで以上に多様な新しい天然物の獲得が可能となる。これまでにも、様々な休眠型生合成遺伝子クラスターの発現を誘導する方法の開発が行われてきたが、それでも、一部のクラスターのみの利用にとどまっている。一つに方法論で、多様なクラスターの発現を誘導できる手法ができれば、多様な天然物を効率よく取得可能になる。そこで、本研究では、大規模ゲノム再編性を糸状菌に適応し、多様な二次代謝プロファイルを示す株の作製を目指した。アスペルギルス属糸状菌に対して、制限酵素遺伝子を導入した形質転換株を作製した。制限酵素遺伝子導入株について、制限酵素の至適温度を考慮した温度条件の検討など種々の検討を行ったところ、多様な形質が変化した株の取得に成功した。得られた株について、二次代謝プロファイルを調査したところ、複数の代謝プロファイルを示す形質変化株を確認し、本法が多様な休眠型遺伝子クラスターを利用した天然物探索に有用であることが示された。さらに、得られた株において、大規模なゲノム再編性が起きていることをゲノム解析により明らかにした。本成果により、大規模ゲノム再編性の糸状菌への適応が、多様な二次代謝物の創製に有用であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、制限酵素を利用する大規模ゲノム再編性を糸状菌に適応可能であること、また、休眠型生合成遺伝子由来の天然物の獲得が可能であることを示すことができた。一方で、詳細な条件や適応範囲の拡大については、今後の検討課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、特定のアスペルギルス属糸状菌においてのみ、本法の効果を確認した。この際、再現可能な条件の確立や他の菌株への展開などについて課題が残っている。今後、糸状菌に対するゲノム再編性の条件の最適化、アスペルギルス属以外の菌への展開により、本法を糸状菌天然物探索法として確立する。
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Causes of Carryover |
今年度は、特定のアスペルギルスに対する検討に時間を要したため、試薬や消耗品などは昨年度からのもので不足しなかった。そのため、今年度は予定よりも大幅に予算が変更した。一方で、次年度は、大きく展開するため、今年度の予算含めて必要となる。
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