2022 Fiscal Year Research-status Report
Role of omega-3 fatty acid metabolism in cancer stem cells
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21K19353
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
仲 一仁 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (70372688)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | オメガ3脂肪酸 / DHA代謝 / CML幹細胞 / Gタンパク質共役受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
長鎖脂肪酸のうち,炭素末端のn-3位に二重結合をもつ不飽和脂肪酸はオメガ3脂肪酸と呼ばれている.哺乳動物はこのオメガ3脂肪酸を生合成できないため,体外から摂取しなければならない必須脂肪酸に位置付けられている.近年のリピドミクス解析の技術進展により様々な脂質代謝産物の研究が進められているが,オメガ3脂肪酸代謝の意義は研究途上である. 一方,慢性骨髄性白血病 (CML)患者の生命予後はチロシンキナーゼ阻害剤 (TKI)の開発によって飛躍的に向上したが,TKI治療後の再発が問題となっている.CML幹細胞は非常に多くのCML細胞を生み出す能力と,TKI抵抗性を併せ持つ細胞であり,TKI治療後に残存した CML幹細胞は再発の原因となることが知られている. 研究代表者仲は,マウスモデルより純化したCML幹細胞のリピドミクス解析を実施し,DHAやその代謝産物が高度に蓄積していることを発見した.これらの結果から,『オメガ3脂肪酸代謝はCML幹細胞の制御に重要な役割を担っているのではないか』と着想した.本研究では, CMLのマウスモデルを用い,DHAやDHA代謝産物によるCML幹細胞の制御メカニズムを解析して,生体内でのCML幹細胞の維持におけるオメガ3脂肪酸代謝の意義を解明することを目的とした研究を実施している. これまでに,CML幹細胞の遺伝子発現解析を行い,DHAの代謝亢進と相関する下流の候補遺伝子を探索した.その結果,CML幹細胞では,Gタンパク質共役受容体の遺伝子発現が亢進していることを見出した.Gタンパク質共役受容体は様々な脂質分子の受容体として機能すると考えられており,CML幹細胞においてDHA代謝産物のシグナル伝達に関わることが想定される.そこで,令和4年度は,Gpr82のノックアウトマウスを導入して,in vitroにおけるCML幹細胞の機能解析を行なった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度,野生型マウス,及びGpr82ノックアウト(KO)マウスよりCMLのマウスモデルを構築した.これらのマウスから野生型・Gpr82 KO CML幹細胞を純化し,CML幹細胞の細胞数,並びにin vitroにおけるコロニー形成能の解析を行なった. まず,野生型マウス,及びGpr82 KO マウスより骨髄単核球を取得し,セルソーター(FACS ARIA III, BD社)を用いて,造血幹細胞 (cKit陽性, Sca-1陽性,分化マーカー陰性細胞)の純化を行った. これらのマウス造血幹細胞に対して,レトロウイルスベクターを用いてヒトCMLの原因遺伝子であるBCR-ABL1-GFPを導入後,9.5Gyの放射線照射を行なったレシピエントマウスに移植を行ってCMLマウスモデルを構築した.2週間後,脾臓におけるCML幹細胞 (BCR-ABL1-GFP陽性,cKit陽性, Sca-1陽性,分化マーカー陰性細胞)の細胞数を解析した.その結果,Gpr82 KO マウス由来のCML幹細胞は,野生型マウス由来のCML幹細胞と比較して,細胞数が減少していることが明らかとなった.次いで,野生型,及びGpr82 KO マウス由来のCML幹細胞のコロニー形成能の解析を行なった.上記のCMLマウスモデルより純化したCML幹細胞を用いて,メチルセルロース半固形培地(GFM3434, Stem Cell Technologies社)中, 生体内環境を模倣した低酸素(3%酸素濃度)環境下で培養を行なった.その結果,Gpr82 KO マウス由来のCML幹細胞ではコロニー形成能の低下が認められた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,Gpr82ノックアウト(KO)マウス由来のCML幹細胞を移植したマウスモデルを用いて,1次移植における白血病発症マウスの生存期間,2次移植におけるCML幹細胞の白血病発症能力,並びにTKI抵抗性の解析を行ない,CML幹細胞の制御におけるGタンパク質共役受容体Gpr82の役割を解明する. また,CML幹細胞の制御に関わるDHAの代謝産物として,DHAを側鎖として持つリン脂質DHA-PA, 並びにDHA-LPAが想定されている.そこで,野生型, 及びGpr82 KO CMLマウスモデルよりCML幹細胞を純化し,DHA-PA(Avanti Polar Lipids社), 並びにDHA-LPA (Avanti Polar Lipids社)の処理を行なって,in vitroでのコロニー形成能におけるDHA代謝産物の役割を解析する.さらに,上記のGpr82 KO マウス由来のCML幹細胞を移植したマウスに対してDHA-PA, 並びにDHA-LPAの腹腔内投与を行い,DHA代謝産物のCML幹細胞の制御におけるGpr82の役割を明らかにする計画である.
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Generation of Philadelphia chromosome in human leukemia by DNA breaks on the BCR and ABL1 genes using CRISPR/Cas9 system.2023
Author(s)
Tamai M, Fujisawa S, Nguyen Thao TT, Komatsu C, Kagami K, Kamimoto K, Omachi K, Kasai S, Harama D, Watanabe A, Akahane K, Goi K, Naka K, Kaname T, Teshima T, and Inukai T
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Journal Title
Cancer Gene Therapy
Volume: 30
Pages: 38-50
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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