2021 Fiscal Year Research-status Report
ダイレクトリプログラミングによる心臓ペースメーカ細胞誘導法の確立
Project/Area Number |
21K19359
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
川村 晃久 立命館大学, 生命科学部, 教授 (90393199)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | ダイレクトリプログラミング / 心臓ペースメーカ細胞 / 再生医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
先進国で主要な死因を占める心不全は致死性不整脈を合併する。また、過労死や突然死の原因の多くを致死性不整脈が占めており、超高齢社会を迎える本邦において生産者層の突然死・過労死を予防することは、医療だけでなく経済活性化の問題においても重点課題といえる。致死性不整脈の中でも心拍数が著しく低下する重症徐脈性不整脈では機械式ペースメーカの移植が主な治療法として普及している。しかし、感染、自律神経不応答、高額医療(~250万円)などの課題を抱えるため、ペースメーカ組織を再生させる新たな治療法の開発が急務となっている。心臓の拍動は右心房に限局する微小な心臓ペースメーカ組織・洞房結節が制御しているが、強度の持続運動や心不全が引き金となりストレスが加わるとその機能が障害される。本研究では、機械に代わる心臓ペースメーカ細胞を別の細胞から誘導する方法の確立を目指す。そこで、ペースメーカ組織の発生制御分子ネットワークに着目し、以下3 つのテーマを目的として設定して研究を計画し実施してきた。 テーマ1 心臓ペースメーカ組織発生における制御因子の同定と分子ネットワークの解明 テーマ2 未分化幹細胞から心臓ペースメーカ細胞への分化誘導法の開発 テーマ3 成熟体細胞から心臓ペースメーカ細胞への直接細胞転換法の開発
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、テーマ1「心臓ペースメーカ組織発生における制御因子の同定と分子ネットワークの解明」に向けて、ペースメーカ組織で蛍光を発するHcn4-GFPレポーターマウスの発生期心臓の網羅的遺伝子発現解析(RNA-seq)から抽出した候補転写制御因子168個に着目した研究を実施した。一部の重要な転写制御因子については、cDNAをsubcloningして、それらを遺伝子導入できるレトロウイルスベクターやレンチウイルスベクターを作製した。 また、テーマ2「未分化幹細胞から心臓ペースメーカ細胞への分化誘導法の開発」に向けて、ES/iPS細胞からの心血管系への分化誘導実験系を構築し、テーマ1で着目した遺伝子の一部を用いて、ペースメーカ細胞への分化効率が向上するか否かを評価する実験を行った。現在、顕著な効果をもつ候補因子については評価段階であり、引き続きテーマ1~2の実験を継続する必要がある。上記の理由から、本研究は部分的には順調に進展しているものの、候補遺伝子の絞り込みが予想以上に挑戦的な課題であり、全体的に考えるとやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、テーマ1の目標である「心臓ペースメーカ組織発生における制御因子の同定と分子ネットワークの解明」に関して、RNA-seqにより同定した168個の候補遺伝子をさらに絞り込む目的でATAC-seqを実施する。また、着目した遺伝子を導入する目的でウイルスベクター以外に、電気穿孔法も試みる。このような対策を経て、テーマ3「成熟体細胞から心臓ペースメーカ細胞への直接細胞転換法の開発」を目指して、研究を展開していきたい。遺伝子導入する対象の細胞として、Hcn4-GFPマウスの心臓組織由来の心筋線維芽細胞や作業心筋細胞を用いて、心臓ペースメーカ細胞へ転換させる実験を計画する。さらに、転換効率を向上させるための工夫として、数理モデルを用いて重要なイオンチャネルを発現させ電気的な自動能を獲得する工夫を行う予定である。
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Research Products
(4 results)