2021 Fiscal Year Research-status Report
原虫核からヒト細胞核へ移行する新規宿主制御因子の解明
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21K19372
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野崎 智義 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (60198588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津久井 久美子 国立感染症研究所, 寄生動物部, 主任研究官 (00420092)
サントス ハルベルト・ヒメネス 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (90793779)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 原虫 / 宿主制御 / 分泌 / 核移行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、寄生性原虫赤痢アメーバの分泌タンパク質による、新しい宿主調節機構の解明を目的とする。リジン・グルタミン酸リッチタンパク質(Lysine glutamic acid rich protein, KERP2)は赤痢アメーバの核内因子でヒト細胞への接触により核から脱出し、細胞外に放出され、ヒト細胞に取り込まれる前例のないタンパク質である。本研究ではKERP2が生理作用を惹起する標的細胞を腸管・免疫系細胞から特定し、2. KERP2の宿主遺伝子発現や脂質代謝制御分子機構を解明するとともに、3. KERP2の輸送に関する責任領域を同定することを目的としている。初年度はヒト培養細胞(Caco2とRAW264.7)を用いKERP2の細胞指向性を組織化学とライブイメージングで解析した。大腸菌組換えKERP2とGFP-KERP2発現赤痢アメーバ株の両方を用い、KERPの移行を定量的に計測するシステムを構築し、いずれでもいずれのヒト細胞系統にもKERP2が移行することが示された。さらに、Caco-2細胞とRAW264.7を用い、KERP2添加による全遺伝子発現への影響をRNA-seq解析するため、GFP又はHAを付加したKERP2の発現レベル、混合する細胞比率などを最適化した。antisense small RNAによりKERP2発現抑制赤痢アメーバ株を作成した。また、KERP2の結合タンパク質を同定すべく、共培養と免疫沈降によりKERP2結合タンパク質を濃縮し、質量分析を試みた。更に、細胞内・細胞間輸送に係るKERP2領域の同定、機能の解明を目指し、コイルドコイル、核移行・脱出配列領域を欠損した変異体をGFPの融合タンパク質として発現する形質転換株を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ予定通り研究が展開されている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はヒト末梢血から末梢血単核細胞(PBMC)を精製し、FACSを用いてAlexa FluorまたはGFP標識したKERP2の結合する細胞種(CD4/CD8陽性細胞T細胞、B細胞、NK細胞、単球および樹状細胞など)を特定することを予定している。更に、KERPによるヒト細胞発現制御を明らかにするために、上記の2種の培養細胞とKERP2遺伝子発現抑制株を共培養し、ヒト細胞の全遺伝子発現像の変化を検証する。また、細胞内・細胞間移行シグナルを欠失した赤痢アメーバを用い、原虫・ヒト細胞内での局在・動態を観察し、各領域の機能を解明する。更に、KERP2はPIPsとPIP2sに結合するが、脂質を固相化した膜を用いたアッセイにより、結合に必要な領域を明らかにすることを予定している。
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Causes of Carryover |
細胞培養の規模を小さくすることにより、試薬・器具等の購入費用を削減することができ、その物品費を次年度、全遺伝子発現プロファイルの解析費用に転用することを予定している。また、旅費については、新型コロナウイルス感染症により海外での成果発表ができなかったため。次年度に持ち越す。
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