2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K19373
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
鍔田 武志 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (80197756)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | Bリンパ球 / 多糖抗原 / T細胞非依存性 / 細胞内分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺炎球菌莢膜多糖などの多糖への抗体産生は感染防御に重要である。タンパク質抗原への抗体産生とは異なり、多糖への抗体産生はT細胞によるヘルプなしにおこるが、そのメカニズムは不明である。ニトロフェノール(NP)に特異的なBCRを発現するB細胞をNP化したタンパク質抗原で刺激してもB細胞は活性化しない。しかし、デキストランなどの多糖抗原をNP化し、NP特異的なB細胞と培養すると、B細胞は活性化・増殖する。BCRが抗原と反応するとBCRを介するシグナル伝達がおこるとともに、抗原は細胞内に取り込まれる。取り込まれたタンパク質抗原は速やかにリソソームで分解されるが、多糖は長時間分解されずに後期エンドソーム/リソソームにとどまることを明らかにした。細胞内で長時間保持される抗原が多糖抗原によるT細胞非依存的なB細胞応答に関わるかを明らかにするために、リソソームタンパク質であるカテプシンBとデキスラナーゼの融合タンパク質をコードする発現ベクターを作成し、NP特異的なBCRを発現するB細胞株CH1に導入したところ、この融合タンパク質は発現し、後期エンドソーム/リソソームに局在した。さらに、このCH1細胞をNP化デキストランで刺激したところ、細胞内に取り込まれたNP-デキストランは速やかに分解された。NP特異的なCH1細胞をNP化デキストランで刺激すると活性化マーカーCD69の発現が増強するが、NP化ウシアルブミンの刺激ではCD69の発現は増強しなかった。一方、カテプシンB-デキストラナーゼを発現するCH1細胞をNP化デキストランで刺激してもCD69の発現増強はおこらなかった。これらの結果から、多糖抗原の細胞内での保持が、T細胞非依存的なB細胞応答に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、多糖抗原の細胞内保持がB細胞のT細胞非依存的な応答に関わるかを明らかにすることを目的とする。この目的を達成するために、デキストラナーゼをリソソームに発現させ、抗原としてB細胞に反応したデキストランの細胞内保持を阻害し、デキストランによるB細胞の活性化がおこらなくなるかを明らかにする。デキストラナーゼは動物細胞では発現せず、一部の微生物が分泌する。微生物由来のデキストラナーゼをその活性を保ったままで動物細胞のリソソームで発現させるというのは大きなチャレンジであったが、本年度の解析で、デキストラナーゼとカテプシンBの融合タンパク質を発現させることで、このチャレンジが成功したことが明らかとなった。さらに、この融合タンパク質を発現したB細胞株の解析により、細胞内での抗原保持がB細胞のT細胞非依存的な活性化に関わることを示唆する知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で、カテプシンB―デキストラナーゼ融合タンパク質がリソソームに局在し、抗原としてB細胞を刺激したデキストランを分解することを明らかにした。そこで、この融合タンパク質をコードするターゲットベクターを作成し、CRISPR/Cas9を用いてノックインマウスを作成する。このノックインマウス由来のB細胞をデキストランで刺激した際にB細胞の活性化・増殖がおこらなくなるか、また、このマウス由来のB細胞をB細胞欠損マウスに移入し、デキストランで免疫しても抗体産生がおこらなくなるかを明らかにする。このことで、多糖抗原の細胞内での保持がT細胞非依存性の抗体産生に関わるかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
カテプシンーデキストラナーゼ遺伝子のノックインマウスの樹立を複数回試みたがまだノックインマウスの樹立には至らなかった。このため、このノックインマウスのコロニーを作成するための経費の支出が予定よりも少なくなった。次年度引き続きノックインマウスの樹立を試み、そのコロニーを作成する。
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