2021 Fiscal Year Research-status Report
Construction of a new drug discovery platform for atopic dermatitis
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21K19375
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
垣塚 彰 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (80204329)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / 治療薬 / かゆみ / Th2型 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、アトピー性皮膚炎に罹患する患者が急増している。アトピー性皮膚炎は、小学生以下の児童・乳幼児の実に10%以上が罹患しており、激しいかゆみによって勉学に支障が生じ、学業成績低下の主な原因となっている。また、大人の場合でも、アトピー性皮膚炎のかゆみで睡眠不足や集中力不足が誘発され、ドイツで推定された経済的なロスは、実に年間2,000~4,500億円とされている。治療としては、全世界的にステロイドの外用剤が用いられているが、副作用への不安から非ステロイド性の治療薬の開発が切望されている.本研究は、アトピー性皮膚炎に対して、世界中で切望されている非ステロイド性の外用薬を提供するための革新的な新規治療基盤を構築することを目的とし、本年度は、アトピー性皮膚炎として代表的なモデルである薬剤(MC903)誘導性の皮膚炎を対象とし、以下の結果を得た。 1.炎症部位の組織解析: 皮膚切片に対する(免疫)組織学的な観察で、我々が開発した薬剤(以下、薬剤X)の塗布で、皮膚の厚さ、炎症細胞の浸潤が劇的に回復した。一方、皮膚切片でのTSLPの発現量は、薬剤Xの塗布でも変化は認められなかったが、抗リン酸化JAK抗体による免疫染色像は、薬剤Xの塗布でほぼ消失することが観察された。 2.炎症性サイトカインの解析: 採取した皮膚からのRNAに対し、インターロイキン(IL)-1β、IL-6、IL-4、IL13、IL17、TNFα、TSLP等の炎症性サイトカインmRNAに対する定量PCRを行ったところ、本疾患モデルでTh2型応答が励起されていること、さらに、この応答が薬剤Xによって阻害されていることが明らかとなった。 3.かゆみの抑制効果の解析:マウスの行動をビデオ撮影することで、かゆみを掻く行動(掻破行動)を定量し、薬剤Xの塗布で掻破行動が減少することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した研究をほぼすべて行い、概ね、予想にそった成果が得られた。具体的には、アトピー性皮膚炎での皮膚の肥厚、炎症細胞の浸潤がKUS121の投与で劇的に改善したこと、さらに、この時にTh2型の炎症を仲介するサイトカインmRNAの発現量が低下していること、JAKのリン酸化が抑制されていることが確認できた。一方、アトピー性皮膚炎の起因因子であるTSLP(thymic stromal lymphopoietin)の発現に変化が無かったことから、KUS121の作用点は、TSLPとその受容体との相互作用以下であることが推測されたので、次年度以降は、この点に焦点をあてて解析を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を受け、我々の開発したKUS121のアトピー性皮膚炎での作用機序の解析を行う。即ち、TSLPからのシグナルがどのようにKUS121でブロックされるのかをTSLPの受容体を発現する樹状細胞株を作製することで、解析する。また、本年度の結果において、重要と思われるデータは、十分に再現性を確認する。
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Causes of Carryover |
交付時期が予想より遅く、研究期間が短かったため、また、実験が順調に進み、マウス、試薬の使用量が予定より少なくなったため。次年度は、論文作製にそなえ、重要なデータは、再現性を十分に確認するために、本年度の繰り越し額を活用する。
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