2021 Fiscal Year Research-status Report
百日咳菌の病原性発現制御系を利用した新たな感染防御法の探索
Project/Area Number |
21K19378
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堀口 安彦 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (00183939)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 隆司 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (20845200)
平松 征洋 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (90739210)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 百日咳菌 / 二成分制御系 / BvgAS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、既存の抗生物質によらない百日咳菌(Bordetella pertussis)の感染制御方法を探索および確立することにある。本研究計画では、百日咳菌の病原性が単一のマスターレギュレーター(BvgAS系)によってコントロールされていることに着目し、これをオフにする化合物を探索して使用することによって菌を非病原性化し、結果として感染制御する方法の確立を目指した。 本年度は化合物のスクリーニングに用いるアッセイ系の構築をおこなった。これまで百日咳菌のBvgAS系が不活性の状態(Bvg-相と呼ぶ)で発現する遺伝子についての報告が少ないため、Bvg-相で発現すると考えられる遺伝子24種類を選択し、先行研究の報告どおりに発現が制御されているのかどうかリアルタイムPCR法で検討した。そこで有力な遺伝子をさらに絞りこみ、またアッセイに最適な百日咳菌の培養方法も検討した。その結果、Bvg-相特異的な遺伝子を2種、BvgASが活性化した状態(Bvg+相)で発現する遺伝子を2種選択し、それらのプロモーター活性を評価するレポーター百日咳菌を作製した。また、Bvg+相およびBvg-相で再現よくレポーター遺伝子(gfp)の発現を確認するためには、百日咳菌をボルデジャング寒天培地で培養する方法が最適であることを見出した。 上記のようにして確立したアッセイ系を用いて、1,134種類の化合物ライブラリーをスクリーニングした。その結果、5種の化合物が百日咳菌をBvg-相に誘導して非病原性化する有力な化合物候補として選択することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、初年度はスクリーニングの確立に時間を要すると考えていたが、実際には再現性の高いスクリーニング系を年度途中で確立し、さらに化合物1,134種類の一度のスクリーニングで候補化合物を選別することができた。選別した候補化合物には類似構造も認められるため、これをもとにさらに優れた候補化合物を見出す可能性も出てきた。これらの成果は当初の想定を大きく超えるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に見出した化合物を種々の条件で培養した百日咳菌に適用して、化合物が真にBvgAS系を遮断しているのかどうか確かめるとともに、さらに類似構造の化合物についても同様に検討する。さらに、それぞれの化合物がBvgASにどのように作用しているのか、その機序を探索する。一方で、百日咳菌の感染動物実験モデルを用いて、実際に化合物が百日咳菌の排除に効果があるかどうか検証する。これらを総合して、有力な化合物候補を選択し、臨床応用の可能性を探る。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、化合物の効果を検討するスクリーニング方法の確立のための多くの予備実験を計画していた。その内訳には、ターゲット遺伝子の選択、ターゲット遺伝子のプロモーターに接続するレポーター遺伝子の選択と、それぞれの組み合わせにおける百日咳菌の遺伝子組換え体の作製、さらには複数種類の化合物ライブラリーの使用などが含まれており、その想定に基づき予算計画を立てた。しかし、実験が想定外に順調に進み、ターゲット遺伝子の選択、ターゲット遺伝子のプロモーターに接続するレポーター遺伝子の選択においてはそれぞれ一度ずつの予備実験で結論を得ることができ、さらには化合物スクリーニングにおいても、一種類のライブラリースクリーニングで候補化合物を得られたため、結果として本年の使用実績が予定額よりも著しく少額となった。2022年度はこの成果に基づいて、多額の研究予算が必要となる、構造の類似した新化合物の探索や合成と、臨床応用を意識した感染動物実験を計画している。繰り越し予算を無駄なく執行できるように、これらの実験を詳細かつ綿密に進める予定である。
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Research Products
(10 results)