2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of metabolointeractome in tumor microenvironments
Project/Area Number |
21K19399
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大澤 毅 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (50567592)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | がん / 代謝 / 細胞間相互作用 / アミノ酸 / オミクス統合解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの転移・浸潤・薬剤耐性などの悪性化には腫瘍微小環境が重要な役割を果たす。申請者は、腫瘍微小環境において、分岐鎖アミノ酸のがん細胞への供給が、線維芽細胞や間質細胞からなされる新たなメカニズムが存在する可能性を見出している。本研究では、アミノ酸を軸とした腫瘍組織における細胞間相互作用で鍵となる代謝物(メタボロインタラクト―ム)の探索的な研究から新規がんの治療法の開発につながる研究を目的とする。本研究は、がん研究のみならず、アミノ酸代謝疾患研究、栄養学研究、mTOR研究などの学術体系の変革や転換にも繋がる可能性を有し、がんを克服する画期的な代謝疾患の制御法を開発に繋げるという挑戦的な研究である。 本研究は、がん細胞の生存や幹細胞性維持に重要な、腫瘍組織における細胞間相互作用で鍵となる代謝物の探索と制御を目的とする。申請者が持つ独自の低栄養培養系に、アミノ酸などの代謝物を1種類ずつ添加することで、これまで他の栄養素の作用が混在し解析が困難であった1代謝物に起因する系統的な遺伝子発現解析、エピゲノム解析やメタボローム解析を、がん細胞と線維芽細胞のin vitro共培養系やin vivo共移植系に利用し実現する。具体的には、申請者独自の実験系を駆使して、本年度は以下の2項目を検討し成果を得た。 (1)腫瘍微小環境における細胞間相互作用で鍵となる代謝物の探索 (2)代謝物を介した細胞間相互作用によるがん悪性化機構の解明と制御
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、以下の2項目を検討し、当初の計画医所に進展している。 (1)腫瘍微小環境における細胞間相互作用で鍵となる代謝物の探索: 本研究では、がん細胞と線維芽細胞や免疫細胞との代謝物を介した細胞間相互作用(メタボロインタラクトーム)を解明する。既に申請者らは、膵癌がん細胞株と線維芽細胞 を免疫不全マウスに共移植すると腫瘍増殖を促進し、さらに、メタボローム解析から線維芽細胞由来の分岐鎖アミノ酸が腫瘍内で増加していることを発見した。さらに、本研究では細胞間相互作用で鍵となる代謝物をがん細胞とがん関連線維芽細胞の共培養系、共移植系を用いて、1細胞・空間的遺伝子発現解析やメタボローム解析から同定しておりin vitro in vivoの評価を行った。 (2)代謝物を介した細胞間相互作用によるがん悪性化機構の解明と制御: がん細胞はロイシンなどの必須アミノ酸をmTOR複合体を介したシグナル伝達系で感知することが知られている。しかし、その他アミノ酸によるがん悪性化機構は未だ不明な点が多い。本研究は、独自の低栄養培地に1アミノ酸のみを添加した培地を作成し各アミノ酸存在下で、繊維芽細胞とがん細胞を24時間培養し、各アミノ酸で特異的に発現誘導される遺伝子群やメタボロームデータを用いて各アミノ酸に代謝経路やシグナル伝達系など、がん悪性化機構を解明する。また、各種アミノ酸で特異的なヒストン修飾(H3K4me3, H3K27ac)を解析し、プロモーター、エンハンサーの同定し、クロマチン相互作用のデータとの統合解析から、上流転写因子やアミノ酸トランスポーターなどの各アミノ酸で鍵となる機構を解明する。申請者は、グルタミン標的遺伝子群、グルタミン標的エンハンサー、の解析から感知・制御因子候補を複数同定したほか、がん線維芽細胞で高発現し、アミノ酸供給に寄与するメカニズムの解明を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、がん細胞の生存や幹細胞性維持に重要な、腫瘍組織における細胞間相互作用で鍵となる代謝物の探索と制御を目的とする。申請者が持つ独自の低栄養培養系に、アミノ酸などの代謝物を1種類ずつ添加することで、これまで他の栄養素の作用が混在し解析が困難であった1代謝物に起因する系統的な遺伝子発現解析、エピゲノム解析やメタボローム解析を、がん細胞と線維芽細胞のin vitro共培養系やin vivo共移植系に利用し実現する。 本研究は、当初の計画以上に進展していることから、 引き続き、 (1)腫瘍微小環境における細胞間相互作用で鍵となる代謝物の探索: (2)代謝物を介した細胞間相互作用によるがん悪性化機構の解明と制御: を行うとともに、(3)現存する化学療法との併用における相乗効果の検討に繋げたい:具体的には、上記計画(1)、(2)で同定した標的を阻害して抗腫瘍効果が得られるか、また、現存する抗癌剤や分子標的治療薬との併用で相乗効果が認められるかin vivoの腫瘍移植実験系で検討する。本研究よりがん悪性化を促進する細胞間相互作用で鍵となる代謝物の同定とその制御が可能となり、腫瘍微小環境で悪性化するがん細胞を攻略する画期的ながん治療法の開発に繋げる。
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Research Products
(16 results)