2021 Fiscal Year Research-status Report
RNA regulator in breast cancer stem cells and its application to therapy
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21K19403
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
淺原 弘嗣 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (70294460)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | RNA binding protein / breast cancer / cancer stem cell |
Outline of Annual Research Achievements |
乳がんは、日本で年間9万人以上が罹患する、女性において最も頻度が高いがんである。中でもトリプルネガティブ乳がんは乳がん全体の約20%を占め、他のタイプの乳がんと異なり、十分な治療法が確立されていないため、予後不良な疾患である。トリプルネガティブ乳がんにおいてはCD44陽性CD24陰性などのマーカーで特徴づけられる乳がん幹細胞集団が存在し、治療抵抗性に寄与することが知られてきた。そこで我々は、予備実験において、TNBCのがん幹細胞において特異的に高発現するRNA結合タンパク(RBD24)を同定し、RBD24がRNA階層において、乳がん幹細胞を規定する可能性を見出した。このRBD24について本年度は以下の解析を行った。現在RBD24と共発現するような因子の探索を免疫染色とscRNAseqの再解析のデータをもとに行っている。 1)RBD24のTNBC癌幹細胞の遺伝子発現プロファイルにおける機能解析:既報のscRNAseqデータの再解析を行ったところ、RBD24が乳がん幹細胞様の発現を示す細胞集団において強く発現することを明らかにした。またトリプルネガティブ乳がん患者由来の病理検体においてもRBD24の発現部位について検証を行った。 2)RBD24のRNA結合能を介した分子機能解析:RBD24を発現するMDAMB231細胞を用いてPAR-CLIP解析を行うことで、RBD24が結合する標的遺伝子および塩基配列をtranscriptome wideに高解像度で同定した。特に乳がん幹細胞性を制御する上で重要な遺伝子の3’UTR上の特定のcis-element配列に結合することで標的遺伝子のmRNAを安定化させることを明らかにした。特にこのcis-elementをもつ領域を含む3’UTRを搭載したレポーターを用いてRBD24によるレポーター活性の変化を計測したところ、RBD24の発現によるレポーター活性の上昇が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)RBD24のTNBC癌幹細胞の遺伝子発現プロファイルにおける機能解析: 既報のscRNAseqデータの再解析を行い、RBD24の発現が乳がん幹細胞において強くみられることを確認した。さらに、scRNAseqデータの再解析よりRBD24と共局在する遺伝子群の同定を複数行った。現在これらの共局在候補遺伝子に対する免疫染色をトリプルネガティブ乳がん患者病理検体に対して行うことでRBD24の検体内における発現部位の評価を行っている。また、RBD24の上流制御候補転写因子としてKLF4の他にも複数の転写因子の同定に成功しており、これらと総合してRBD24の発現制御メカニズムの同定を進めている。 2)RBD24のRNA結合能を介した分子機能解析:RBD24を発現するMDAMB231細胞を用いてPAR-CLIP解析を行うことで、RBD24が結合する標的遺伝子および塩基配列をtranscriptome wideに1塩基レベルの解像度で同定した。特に乳がん幹細胞性を制御する上で重要な遺伝子の3’UTR上の特定のcis-elementに結合することで標的遺伝子のmRNAを安定化させることを明らかにした。また、これらの遺伝子の3’UTRを搭載したレポーターを用いてレポーターアッセイを行ったところRBD24の発現による3’UTR依存的なレポーター活性の上昇が確認された。また、ActinomycinDにより転写を止めることでRNAの安定性を評価したところ、MDAMB231細胞株やHCC38細胞株において乳がん幹細胞性を示すうえで重要な遺伝子群のmRNAがRBD24のノックダウンにより複数不安定になることが分かった。現在標的遺伝子のmRNAの安定性の変化をSLAMSeqにより、また、転写と転写後制御の同時解析をDyrecSeqにより、transcriptome wideに検証することを試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)RBD24のRNA結合能を介した分子機能解析:RBD24によって安定化される遺伝子mRNAをtranscriptome wideに同定するために核酸アナログを用いてSLAM-Seqを行う。特にMDAMB231細胞株と共に患者由来乳がん細胞(PDX)を用いることを計画している。この結果とPARCLIPの結果とを比較することで標的制御の特異性をさらに検証する。また、Dyrec-Seqと呼ばれる転写とRNAの安定性を同時に評価する実験系を実施することで、RBD24の転写制御と転写後制御の双方を同時に解析することを試みる。 2)化合物スクリーニング:High Contentsタグがノックインされた細胞を用いて、LOPAC library (Sigma Aldrich社)内の化合物1280種に対して化合物スクリーニングを行う予定である。特に発現上昇・下降させる化合物についてはRBD24の発現制御メカニズムの同定を試みる。さらに、RBD24に対するsiRNAと同定化合物を併用投与し、MDAMB231細胞株などを移植した腫瘍皮下移植モデルに対して治療実験を行うことで治療効果の増強の有無を検証する。 3)乳がん患者由来腫瘍組織を用いた解析:MDAMB231細胞株や乳がん患者由来腫瘍組織に対してRBD24を標的とした核酸製剤を用いてノックダウンを行うことで腫瘍形成能の有無の変化の解析を行う。In vitroにおいてはSphere formation assayやELDA解析、in vivoにおいてはNOGマウスに対する皮下移植に対する限界希釈解析を行うことで腫瘍形成能の変化を解析する。また、乳がん患者由来腫瘍組織におけるRBD24による制御遺伝子を網羅的に同定するために、bulkのRNA-SeqをRBD24をノックダウンしたサンプルに対して行う予定である。
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Causes of Carryover |
NOGマウスを使った実験系(腫瘍形成能の評価や治療実験等)について、実験系の樹立などの条件検討により、予定よりも実験を行うことができなかった。結果として本年度購入・使用したマウス数は予定より少なくなり、また同マウスを用いて行う予定であった実験が行えなかったことにより、予定通りの予算執行ができなかった。 すでに実験系の樹立の条件検討は終わりつつあり、次年度においてはNOGマウスを用いた実験系を行う予定のため、十分な数の同マウスを用いた実験、およびそれを用いた分子生物学的実験に必要な試購入のために使用する。
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Research Products
(8 results)