2021 Fiscal Year Research-status Report
新規腫瘍免疫モジュレータータンパク質による体内誘導型テーラーメイドがん治療法開発
Project/Area Number |
21K19408
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
二村 圭祐 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00462713)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
Keywords | 腫瘍免疫 / ウイルス療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍浸潤リンパ球を活性化させることで強い抗腫瘍効果が期待できることが、免疫チェックポイント阻害剤の開発により近年明らかになってきた。しかし、腫瘍浸潤リンパ球が元々少ない症例では免疫チェックポイント阻害剤の効果は期待できない。ウイルスを腫瘍内に投与するウイルス療法は殺腫瘍細胞効果を持ち、さらに腫瘍浸潤リンパ球を増幅・活性化する効果を持つと期待されている。腫瘍溶解性ウイルスはがん細胞内で増幅することで、がん細胞を殺傷すると考えられているのに対して、非増殖性ウイルスがどのように抗腫瘍効果を誘導するのか不明な点が多い。非増殖性センダイウイルス(HVJ-E)の腫瘍内投与は高い抗腫瘍効果を発揮する。申請者らはHVJ-Eの抗腫瘍効果の分子機序の解明に取り組み、脂質代謝関連分泌因子の1つがHVJ-Eによって腫瘍細胞から分泌されることが、HVJ-Eの抗腫瘍効果の実体であることを見出した。この脂質代謝関連分泌因子の抗腫瘍効果メカニズムを明らかにするために、この脂質代謝関連分泌因子を腫瘍内投与することで、HVJ-Eと同様の応答をがん細胞が示すか検討した。その結果、HVJ-Eの腫瘍内投与と同様に脂質代謝関連分泌因子の投与によって、がん細胞でPARPの切断が促進し、細胞死が誘導されていることがわかった。また、脂質代謝関連分泌因子の腫瘍内投与によって、HVJ-Eの腫瘍内投与と同様にがん細胞においてNKG2Dリガンドの発現が亢進することがわかった。以上の結果から、申請者らが同定した脂質代謝関連分泌因子がウイルス療法と同じ抗腫瘍効果を誘導できることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究から、HVJ-Eの抗腫瘍効果の本体として同定した脂質代謝関連分泌因子がHVJ-Eと同様にがん細胞において細胞死を誘導し、NKG2Dリガンドの発現を誘導し得ることを見出した。そのため、おおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究から、申請者らが同定した脂質代謝関連分泌因子がHVJ-Eによる抗腫瘍効果を誘導するために必要十分な因子であることが示唆された。しかし、脂質代謝関連分泌因子をがん細胞がどのように受け取り、細胞死を引き起こすのか、そのシグナル経路は全く不明である。このシグナル経路を明らかにすることで、創薬標的を複数同定できると考えられる。そこで、今年度においては、脂質代謝関連分泌因子によるがん細胞でのシグナル経路を網羅的に同定するためのスクリーニングを行う。これまでの予備的な実験から、本スクリーニングを行うために必要な材料、実験系は構築済みである。本研究の成果はこれまでにない創薬標的を明らかにすることができると考えられる。
|
Causes of Carryover |
コロナウイルスによる必要な材料入荷の遅延などにより、予定していた実験を一部翌年度に繰り越した。今年度は新たにスクリーニングを計画しており、そのための費用として使用する。
|