2021 Fiscal Year Research-status Report
メチオニン代謝を基盤としたがん治療抵抗性機構の解明と新規治療標的の同定
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21K19416
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐谷 秀行 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (80264282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大槻 雄士 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (10875412)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 治療抵抗性 / メチオニン代謝 / レドックス制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞は外的・内的なストレスに対応して細胞の代謝系を変更することで増殖や生存に適切な環境を取得する能力を持つ。申請者らは長年にわたり、難治性がんにおけるアミノ酸代謝変化と抗酸化機構を標的としたがん治療の開発を行い、がんの治療抵抗性にはシスチン代謝に基づくレドックス制御が深く関与することを見出し、シスチントランスポーターの阻害や、過酸化脂質から産生される毒性アルデヒド誘導など、レドックス制御ネットワークの攪乱が腫瘍特異的な治療法になることを提唱している。そして具体的な治療戦略として、xCT阻害剤とALDH阻害剤の併用が様々な臓器由来のがん細胞、とりわけ治療抵抗性となった細胞に有効であることを見出した。しかし、細胞によってはメチオニン代謝を利用することでxCT阻害剤とALDH阻害剤の併用による細胞死を回避する能力があることを見出している。つまり、シスチン代謝によるレドックス制御はメチオニン代謝によって補完されることがわかり、更にメチオニン代謝はエピジェネティクスにも影響を及ぼすことから、その代謝ネットワークの解明は治療抵抗性機構の全貌を理解する上で極めて重要と考える。本研究は、がんの治療抵抗性におけるメチオニン代謝とその変化によって影響を受けるネットワークの役割を明確にし、治療抵抗性打破のための標的を見出すこと、そして薬剤および遺伝子編集手法によってその評価を行い新たな治療戦略構築に貢献することを目的として実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メタボローム解析と遺伝子発現解析によってシスチン代謝遮断による細胞死を回避する細胞では、シスチンの合成のためにメチオニンが消費されていることが分かり、逆にそれらの細胞はシスチン欠乏には耐性を示すものの、メチオニンが不足するためにin vivoでは腫瘍形成能が低下することが分かった。つまりシスチン代謝とメチオニン代謝の連関を詳細に解析することで治療抵抗性機構を明確にできる確信を持つことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
シスチン代謝遮断がメチオニン代謝にどのような歪をもたらすかについて、in vitroとin vivoのモデルを用いて解析する。シスチン代謝遮断とメチオニン代謝関連薬剤及び遺伝子編集を用いた合成致死スクリーニングを行い、腫瘍細胞特異的な致死誘導分子の同定を目指す。そしてその分子を制御したときのメタボローム解析と遺伝子発現解析、腫瘍形成能評価を行うことで腫瘍特異的致死誘導機構を明らかにする。またメチオニン代謝はエピジェネティクスにも影響を与えることから詳細な遺伝子発現解析も実施する。さらに今回の標的がアミノ酸代謝であることから、薬剤や遺伝子制御のみならず、食餌の内容変更が治療に影響を及ぼす可能性があり、これまでと全く異なった治療抵抗性に対する新規治療をデザインすることを目標として実験を行う。
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Research Products
(4 results)