2021 Fiscal Year Research-status Report
動物コミュニケーションシグナルのリアルタイムフィードバック提示
Project/Area Number |
21K19424
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安部 健太郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70462653)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | コミュニケーション / バーチャル / 鳴禽類 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトは音素を複雑に組み合わせた音声言語である「ことば」を使用し、他個体と意思疎通を図る。このように複雑な音声を使用する動物種は少なく、「ことば」による意思疎通はヒト固有の能力とされることも多い。鳥類の一類、鳴禽類も「歌」や「さえずり」と呼ばれる音素を複雑に組み合わせたシーケンスを用いてコミュニケーションを取得し、状況に応じて多彩なシーケンスからなる「さえずり」を発するため,ヒトの「ことば」の発声や理解の一部の神経機構を解析する動物モデルとして使用できる。本計画では、鳴禽類を防音箱中に隔離し、被験個体が発するさえずりをリアルタイムで解読するとともに液晶モニタ上のバーチャル個体を介して人工的に応答さえずりを提示するシステムを開発する。これにより音声シーケンスによるコミュニケーションを動物モデルにおいて実験室内で再現することを可能にする。この目的のため,本研究では,鳴禽類個体の発する「さえずり」中の音声シーケンスを迅速に解析するプログラムを作成する。また,鳴禽類個体に対し擬似的な状況を提示しそれに応じて発せられる「さえずり」を記録,その音声解析を行い状況に応じて発せられる音声パターンの違いを明らかにする。また被験個体の「さえずり」発声後に迅速にその内容を解析し,それに応じた人為シグナル提示するセットアップを確立する。また,そのような人為シグナルに対する被験個体の応答を音声,行動,そして脳活動の観点から記録し,被験個体がどのようにその人為シグナル評価するのかを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では鳴禽類の発する音声シーケンスを迅速に解析しその発声内容を評価する技術,発声に応答して迅速に人為的シグナルを提示する技術,人為シグナルを個体がどのように認識するのかを客観的に評価する技術が必要とされる。現在までに,鳴禽類が発声した音声を録音し,迅速に発声内容を解析するプログラムを確立した。また,鳴禽類個体に液晶モニタバーチャル個体を提示し,それに対する応答を音声および行動に関して記録する実験系を確立した。また,提示された情報を被検者がどのように感じるのかという主観を客観的に評価する必要がある。個体がどのように感じたのかは生体脳内の細胞の反応を記録することで評価できる。このため,研究代表者は、生体組織内細胞の内在転写因子活性を定量評価・経時評価することを可能にする、自己補正機能付のレポーターウイルスの開発と、それを利用した転写因子活性プロファイリング技術の確立に成功し,論文発表した(Abe and Abe iScience 2022)。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、これまでに得られた解析系を組み合わせ,実際に発声内容に応じた人為シグナルとしてのバーチャル個体の提示を行い,さらなる発話を誘導する。また,確立した脳内観測系を用いて人為シグナルをどのように被験個体が感じるのかを客観的に評価し,人為シグナルの最適化に務める。
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Causes of Carryover |
さえずり解析プログラムの開発が想定より遅れたため,本年度は一部の実験セットアップのみ準備し,それを用いて実証実験および実験系開発を行った。翌年度は遅れた実験セットアップの拡充を行う。
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Research Products
(3 results)