2021 Fiscal Year Research-status Report
アストロサイトから神経細胞への分化転換を用いた神経回路の機能的再建
Project/Area Number |
21K19425
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田中 光一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (80171750)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | アストロサイト / 分化転換 / 神経変性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経変性疾患を治療するためには、失われた神経細胞を補充するのみならず、補充された神経細胞が既存の神経回路と機能的な結合をする必要がある。神経細胞の補充には、iPS細胞から分化させた神経細胞の移植が主に行われてきたが、この方法では神経回路の再構築は困難である。最近アストロサイトのPtbp1遺伝子をノックダウンすると、アストロサイトがその部位の神経細胞と同じ特徴を持った細胞に分化転換し、既存の神経回路に組み込まれることが、網膜と黒質で示された。しかし、網膜・黒質における分化転換の効率は十分ではなく、網膜・黒質以外の脳部位のアストロサイトの分化転換能は不明である。本研究では、脳の全ての部位のアストロサイトからPtbp1遺伝子を欠損させ、各部位におけるアストロサイトの分化転換能を解析できるin vivoの系を開発する。その系を用いて、アストロサイトから神経細胞への分化転換を阻害する遺伝子を同定する。本年度は、CRISPR/Cas9を用いfloxd-Ptbp1マウス(Ptbp1遺伝子のエクソン1の両側にloxP配列をノックインしたマウス)を作成し、GLASTの遺伝子座にCreERT2(タモキシフェンにより活性化されるCre酵素)をノックインしたマウス(GLAST-CreERT2マウス) およびROSA-LSL-tdTomatoマウス(ROSAの遺伝子座にloxP-STOP-loxP-tdTomatoをノックインしたマウス)と交配した。このマウスが成熟後、タモキシフェン(Tmx)を投与し、神経系の全てのアストロサイト・サテライト細胞からPtbp1を欠損させたマウスを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の実験計画の目的である、in vivoのアストロサイトーニューロン分化転換能評価系を確立したので。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に作成したマウスにタモキシフェンを投与し、その6週間後に、神経系を摘出し、各部位の切片を作成し、tdTomato陽性細胞の中の神経細胞マーカー(NeuNなど)陽性細胞の割合やtdTomato陽性神経細胞の突起の伸長を解析し、各部位でのアストロサイトから神経細胞への分化転換能を明らかにする。 また、小脳のバーグマングリア(BG)からプルキンエ細胞(PC)への分化転換に着目し、分化転換を阻害する遺伝子を同定する。タモキシフェン投与後の分化転換過程で発現が変化する遺伝子群を、PC層から単離した細胞のシングルセル発現解析を経時的(投与前、投与後2、4、6週間)に行うことにより明らかにする。分化転換の過程で発現が減少する遺伝子群に着目し、BGに比べPCで発現量が少ない遺伝子群を選び、絞り込みを行う。絞り込んだ遺伝子群は分化転換を阻害する因子と考えら、その発現を抑制すると分化転換が促進すると期待される。阻害遺伝子のノックダウンによる分化転換促進作用の確認は、CasRx(Cas13d)によるin vivoノックダウンを用いて行う。GFAPプロモーターの下流にCasRx、U6プロモーターの下流に候補遺伝子に対する2種類のguide RNAs をつないだAAVベクターのライブラリーを作成する。1マウスの小脳表面の髄液腔に、タモキシフェンとともにAAVベクターを注入し阻害遺伝子候補の発現をノックダウンさせ、6週間後にtdTomato陽性BGの中のカルビンディン陽性細胞の割合やtdTomato陽性PCの突起の伸長を解析し、BGからPCへの分化転換の促進作用を確かめる。
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Research Products
(1 results)