2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K19435
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堂浦 克美 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00263012)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
Keywords | プリオン / アルカリフォスファターゼ / 細胞内分解系 |
Outline of Annual Research Achievements |
異常蛋白質凝集体で、明瞭な自己増殖能を有する「プリオン」は、代表的な難分解性蛋白質であり、強力な蛋白質変性条件でないと自己増殖能を失わない。一方、細胞レベルでは、プリオンは細胞膜上やエンドソーム・ゴルジ装置などで自己増殖し、リソソームに蓄積して『感染』し続けることが可能である。リソソーム活性を上げたりオートファジーを誘導すると、プリオンの一部は分解されるものの、完全に失われることはない。また、プリオンはユビキチン化を受けず、プロテアソーム系が分解に関与していないことも広く認知されている。これまでにプリオンのような難分解性蛋白質を細胞内で完全に分解排除するメカニズムは明らかになっていない。研究代表者は、プリオン持続感染細胞を用いて検討したところ、細胞内の異常蛋白質排除に関わる新たな蛋白質分解系の存在を強く示唆する結果を得た。本研究では、手掛かりと考えているアルカリフォスファターゼを中心に、「新たな蛋白質分解系」に関わる要素群を抽出し、これまでに知られていない難分解性蛋白質凝集体の細胞内分解系の新原理を究明する。具体的には難分解性プリオン株22L、22Lに持続感染が可能な細胞N2a#58と、そのサブクローン群(持続感染成立細胞、感染消失細胞など)を用いて、アルカリフォスファターゼ関与の妥当性の検証に関わる実験と関連要素の探索に関わる実験を行い、異常蛋白質に対する新たな細胞内分解系の存在に関する仮説を実証しようとした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
22LプリオンならびにN2a#58細胞及びそのサブクローンを用いて以下の実験を行った。 ①アルカリフォスファターゼ(Alpl)関与の妥当性の検証に関わる実験: (1)Alplの発現状況・局在を蛋白質レベルで確認した。Alplは、プリオンの元となる正常型プリオン蛋白質と同様にGPIアンカー蛋白質であり、細胞膜ラフトに局在することが知られていることから、両者の局在をそれぞれの特異抗体を用いた免疫蛍光染色で観察した。両者が相互作用し得るかどうかを調べるため、観察に至適な諸条件を検討した。(2) Alpl遺伝子のsiRNAによる遺伝子ノックダウンを行い、プリオンへの影響を確認した。また、遺伝子ノックダウンの正常型プリオン蛋白の発現や局在への影響を確認した。また、遺伝子ノックダウンの特異性を確認するため、Alpl遺伝子の遺伝子導入でノックダウン結果をレスキュできるかどうかの検討を開始した。(3) Alplの各種生理的基質を細胞培養液に添加して、正常型プリオン蛋白やプリオンへの影響を調べた。基質濃度や基質の組合せについてはさらなる条件検討が必要であることが判明した。 ②Alplシグナル伝達系等の関連要素の探索に関わる実験: (1)Alplシグナル伝達系として報告があるPI3K/AKT系、MAPK系、Wnt/β-catenin系に対する様々な阻害剤を細胞培養液に添加して、正常型プリオン蛋白やプリオンへの影響を調べたが、毒性等の影響で明瞭な結果が得られず、さらに実験の諸条件を詰める必要があった。(2)Alplは細胞膜上や小胞内においてアルカリ性環境で活性を発揮すると推測されることから、その発現部位での局所pH環境を測定するため、共焦点レーザー顕微鏡と細胞膜非透過性化合物を用いたpHイメージング法の確立に向けて準備を進めた。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究を発展させ、22LプリオンならびにN2a#58細胞及びそのサブクローンを用いて以下の実験を実施して、仮説の実証に努める。 ①Alpl関与の妥当性の検証に関わる実験: (1)Alplの活性についても調べる。また、引き続き細胞膜ラフトに共局在するAlplと正常型プリオン蛋白の相互作用を解明する。共局在が起こりやすい培養条件を検討した上で、両者の相互作用について細胞膜を架橋剤処理後に特異抗体で免疫沈降してウエスタンブロットで確認する。(2)引き続きAlpl遺伝子のノックダウン効果の特異性について、ターゲット配列の変更やレスキュ実験を実施して確認する。時間的に余裕があれば、ノックアウトによるプリオンの感染や分解排除への影響も調べる。(3)検討がまだであったAlplの残りの生理的基質やそれらの脱リン化物について、培養液への添加による正常型プリオン蛋白やプリオンへの影響を調べる。最適な濃度や化合物の組合せも検討する。分解排除に関係する化合物がわかれば、関係する代謝系について、介入が可能な範囲内で解析を進める。 ②Alplシグナル伝達系等の関連要素の探索に関わる実験: (1)引き続きAlplシグナル伝達系を調べる。介入が可能な手段(各種阻害剤・特異的抗体・遺伝子ノックアウト・恒常的遺伝子過剰発現など)を活用して正常型プリオン蛋白やプリオンへの影響を調べる。(2)引き続き、細胞膜上のpH環境を追跡するpHイメージング法の確立に取り組み、細胞膜上の局所を一時的にアルカリ性環境に変えてプリオンの分解排除が亢進しないか検討する。具体的には、グルタミン酸トロンスポーターやGABAA受容体の活性化で局所アルカリ性環境を作り出せないか検討し、プリオンの分解排除への影響を評価する。
|
Research Products
(8 results)
-
-
-
-
[Journal Article] Decrease in Skin Prion-Seeding Activity of Prion-Infected Mice Treated with a Compound Against Human and Animal Prions: a First Possible Biomarker for Prion Therapeutics.2021
Author(s)
Ding M, Teruya K, Zhang W, Lee HW, Yuan J, Oguma A, Foutz A, Camacho MV, Mitchell M, Greenlee JJ, Kong Q, Doh-ura K, Cui L, Zou WQ.
-
Journal Title
Mol Neurobiol.
Volume: 58(9)
Pages: 4280-4292
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-
-
-