2021 Fiscal Year Research-status Report
異常型タンパク質のシーディングを利用した神経難病ALSの血液診断法の開発
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21K19456
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
徳田 栄一 日本大学, 薬学部, 講師 (00757510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 誠 日本大学, 医学部, 准教授 (10817224)
中嶋 秀人 日本大学, 医学部, 教授 (20330095)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / 異常型タンパク質 / シーディング / 血液診断 / 早期発見 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、異常型タンパク質が正常型タンパク質の構造異常を誘発する「シーディング」を利用し、ALSの罹患が疑われた時点で採血した「病初期」の血液を用いた新規ALS診断法の開発を行う。ALS血液中の極微量な異常型タンパク質を試験管内でシーディングにより増幅し、対照患者の増幅パターンとの比較を通じて、本手法がALS診断法として妥当か判断する。 2021年度は、ALS血液中の極微量な異常型タンパク質でも増幅可能な高感度シーディングアッセイ法の開発に着手した。研究代表者の先行研究から、ALSの血中に出現する異常型タンパク質はピコmol/L以下と推察された。まず、組換えタンパク質を用いて、ピコまたはフェムト濃度の極微量な異常型タンパク質でもシーディングを誘発する実験条件を探索した。 一般的にタンパク質の溶解性や凝集性は、溶液中に共存する塩の影響を受ける(塩析効果)。塩析は塩の種類や濃度によって異なり、その効果を順位付けしたものを「ホフマイスター系列」と呼ぶ。従来のシーディング実験は、低濃度のNaCl溶液中で行われており、ホフマイスター系列に照らし合わすと、塩析効果は弱い。このため、塩濃度を高めたり、他のホフマイスターイオンを利用したりすることで、異常型タンパク質のシーディング感度の増強が可能と考えた。そこで、ホフマイスターイオン16種の中で、最も異常型タンパク質のシーディング感度を増強するイオン種を探索した。 低濃度、中濃度および高濃度の各ホフマイスターイオンを調製し、シーディングの基質となるALS関連タンパク質と混合した。この混合液にALS関連タンパク質の異常型をシードとして添加し、振とう撹拌しながら、溶液の濁度を定期的にモニターした。その結果、一部の陰イオン溶液中で、異常型タンパク質のシーディング感度が約100倍増強することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画の段階では、2021年度、サイズ排除クロマトグラフィーを研究代表者の研究室に新規に導入し、シーディングアッセイの基質となるALS関連タンパク質の組換え体を大量に精製する予定であった。しかし、昨今の世界的な新型コロナウィルス感染症のパンデミックの影響を受け、サイズ排除クロマトグラフィーの製造が大幅に遅延し、当初の研究計画に遅れが生じた。しかし、このような状況下でも、2021年度はコロナ禍前に精製しておいた組換えタンパク質を用いて、ALS血液診断の基盤となるシーディングアッセイの検出感度を向上させるイオン種の特定に成功した点は、大きな成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、本前年度の研究遅延を取り戻すべく、本研究に費やすエフォートを当初の予定であった25%よりも多く設定し、研究計画を着実に遂行していく。具体的な実施予定の研究計画としては、高感度シーディングアッセイの検出限界を決定するため、ALS関連タンパク質の異常型を段階希釈し、それら異常型が特定したホフマイスターイオン溶液下で、シーディングを誘発するか検討する。その後、共同研究者が保有する病初期のALS患者から採取した血液(10症例)と対照患者の血液(10症例)を使用し、シーディング誘発の有無を比較する。得られたデータから本手法の陽性判定率や特異度を算出し、本手法がALSの血液診断法として妥当であるか判断する。
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Causes of Carryover |
組換えタンパク質の精製に必要なサイズ排除クロマトグラフィーの新規購入の手続きを進めていたが、世界的なコロナ禍の影響を受け、クロマトグラフィー用の半導体不足や機器工場の製造ラインの縮小など、不可抗力が重なり、クロマトグラフィー装置の納期が大幅に遅延してしまった。このため、当初予定していた研究計画の見直しを余儀なくされ、研究計画に遅れが生じてしまった。今年度は研究の遅れを取り戻すべく、組換えタンパク質の合成や精製に必要な試薬や器具類を早急に揃え、ALSの血液診断法を開発するため、研究計画を急ピッチで遂行していく。
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Research Products
(8 results)