2021 Fiscal Year Research-status Report
妊娠初期の子宮筋収縮機構の解明とその破綻による着床への影響
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21K19467
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Research Institution | Osama Woman's and Children's Hospital |
Principal Investigator |
松尾 勲 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 病因病態部門, 部長 (10264285)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | マウス / 子宮平滑筋収縮 / 着床 / 胚発生 / 周産期疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在までの当研究室等による研究から、子宮平滑筋によって生まれる圧力が、胚の正常発生(近遠方向への伸長)と着床維持に必要であることを明らかにしてきた。まず、子宮筋収縮による圧力について子宮軸の方向性や場所によって圧力差があるかどうかについて検討することとした。まず、子宮内で生じる圧力に異方性があるかどうか検討した。具体的には、マイクロトランスデューサーを持つカテーテルを子宮軸に対して一定の方向性をもって子宮内に差し込んで、圧力計測を行った。その結果、子宮筋から胚側にかかる圧力は、子宮間膜・反子宮間膜軸方向と卵管・頸部軸方向との間で有意差はみられなかった。また、同一個体の中で、子宮頸部と卵管側での圧力も大きな差が見られなかった。つまり、子宮平滑筋はの収縮によって生じる圧力は等方的であった。その結果、胚が子宮間膜・反子宮間膜(胚の近遠)軸方向に細長く伸長する際に子宮筋から胚にかかる圧力が偏っているという可能性は、ほぼ排除されたと言える。また、着床した胚は、ライヘルト膜と呼ばれる基底膜に覆われることで、生じた子宮筋収縮による圧力から緩衝されて、着床が維持されることを明らかにしている。しかし、胚の近位(子宮の子宮間膜)側の方向にはライヘルト膜は存在していないにも関わらず、胚は、近位方向から子宮筋からの圧力で押しつぶされることがない。その理由として緩衝作用を持つ別な組織(外胎盤錐等)が、ライヘルト膜の代わりの機能を果たしていることが想定される。そこで、免疫組織染色法を用いてライヘルト膜の主要成分である細胞外マトリクス分子の発現を解析した。結果、ラミニンα1分子の発現が、胚の近位側の外胎盤錐とその周辺で、強く認められた。以上の結果から外胎盤錐周辺のラミニンが、ライヘルト膜と同等な機能(圧力に対する緩衝作用)を担うことで、着床が維持されている可能性を強く支持している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、子宮筋収縮によって生じる圧力の等方性とライヘルト膜が存在しない方向からのある力の緩衝機構について解析することによって、子宮筋収縮機構と着床維持に関わるメカニズムの一端を明らかにすることができた。現在までに得られた研究成果の一部が、国際誌に公表された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、子宮筋収縮によって生じる圧力が、どのように胚の着床維持(正常な胚発生)に関与しているのかより詳細に解析を進める。具体的には、子宮平滑筋収縮によって生じる圧力について、着床直後だけでなく、より発生後期においてもどの程度観察されるのか、またメスマウスの週齢による影響を受けるのかについても検討を進める。さらに脱落膜の形態と圧力との間に関連性があるかについても、解析を行う。以上の解析等から、子宮筋収縮機構の解明とその破綻による着床への影響を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
申請時に予想していたより物品の使用が少なく済んだため。また、新型コロナの感染拡大により当初購入予定の物品の納入が当該年度内は、困難となり、翌年度以降にずれこむこととなったため。
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Research Products
(6 results)