2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of the novel biopharmacy for pulmonary hypertension
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21K19469
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 公雄 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (80436120)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 肺高血圧症 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、未治療の場合の5年生存率が50%という致死性疾患である。重症患者を救う唯一の手段である肺移植はドナー数が限られ、内科的多剤併用療法によっても進行する右心不全によって命を落とす症例が後を絶たず、根本的治療薬の開発が急務とされる。肺移植施設である東北大学病院は重症患者を多く抱え、肺血管拡張薬の多剤併用療法によっても助けられない症例が依然多い。これまで我々は、患者由来の肺組織や肺動脈血管平滑筋細胞(PASMC)を用いて網羅的オミックス解析や候補遺伝子・病因蛋白のスクリーニングを行った。我々は、遺伝子発現変動の網羅的な解析により、肺高血圧症患者由来の肺動脈血管平滑筋において5倍以上の発現上昇を示す遺伝子(蛋白)群を発見し、この遺伝子群が肺動脈血管平滑筋増殖作用及び肺動脈内皮細胞の機能障害を来すことを確認した。既存のPAH治療薬は、血管拡張を主たる作用機序としているため、病態が進行し血管内腔が狭くなると効果が限定的となる。一方、この遺伝子群を標的とする治療薬は、血管内腔の狭小化に重要な働きを示す血管平滑筋細胞増殖を抑制できる可能性が高く、根本治療薬として期待される。最初に発見した蛋白Aについては血液中で測定可能な分泌蛋白であり、その抑制によりPAHは改善した。さらに我々は、肺組織特異的な発現上昇を示す蛋白Bを発見し、蛋白BがPASMC増殖作用及び肺動脈内皮細胞の機能障害を来すことを確認した。さらに、蛋白BをPASMC特異的にノックアウトしたマウスでは有意に肺高血圧の発症が抑制できたことから、蛋白Bに対する抑制薬を作製できれば、これまでとは異なる作用機序による新規PAH治療薬を患者に届けることが可能である。本研究では、以上の知見に基づき、世界初の医薬品開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要で述べた通り、蛋白Aについては血液中で測定可能でありバイオマーカーとしての可能性を有している。次に発見した蛋白Bについても、右室機能低下との関連も確認された。これまで、蛋白Aについての新しい独自の診断試薬開発に成功した。また、蛋白Aの発現抑制を指標にした創薬スクリーニングによって、天然化合物数種類を見出している。この低分子化合物は、肺高血圧モデルラットでの治療効果を示し、肺組織での蛋白Aの発現レベルを低下させることが分かった。一方で、蛋白Bの発現を低下させる医薬品のスクリーニングも実施し、数種類の有効成分を見出している。これらも、動物モデルでの治療効果を確認している。このように、当初計画は順調に進んでおり、今年度もこれまで通り、研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
蛋白Bリコンビナント蛋白による刺激によるラット肺高血圧モデル動物由来の肺動脈血管平滑筋細胞もしくはPAH患者由来の肺動脈血管平滑筋細胞(PAH細胞)の増殖アッセイを構築する。さらに、マウス由来の肺動脈血管平滑筋細胞の樹立を行い、ヒトもしくはラット蛋白Bリコンビナント蛋白によるアッセイ系を構築する。特に、LicorシステムによるIn Cell Weternによる増殖シグナルERKの検出と細胞数増加の両者を同時に検出できるシステムを構築予定である。これにより、比色法による細胞増殖試薬を用いた方法よりも高い精度で増殖抑制効果を検証することが期待される。これらのアッセイ系を用い、下記の実験を実施する予定である。 (1)蛋白B刺激による増殖アッセイ(ヒト蛋白B→PAH細胞、ラット蛋白B→ラット肺動脈血管平滑筋細胞、ラット蛋白B→マウス肺動脈血管平滑筋細胞) (2)PAH患者由来肺動脈血管平滑筋細胞増殖アッセイ
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Causes of Carryover |
2022年度は夏を中心に大きなコロナの感染者増があり、予定通り実験が進まなかったことから、次年度使用額が生じた。2023年度は計画的に研究費の執行予定である。
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