2022 Fiscal Year Research-status Report
自己組織化に依存しない多細胞人工発癌オルガノイドモデルの開発と細胞連関解析
Project/Area Number |
21K19476
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
朝比奈 靖浩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座教授 (00422692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿沼 晴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30372444)
岡本 隆一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50451935)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | ヒトiPS細胞 / オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
発癌や病態形成には、標的細胞における後天的遺伝子異常の蓄積と、組織微小環境を構築する各細胞との細胞連関が関与すると考えられるが、肝臓においてはこの解析をin vitroで可能とする長期培養可能なヒト生理的成熟肝細胞株は存在しない。さらに生理的な培養肝細胞に遺伝子改変群を加えかつ構成細胞の均質化と定量化が可能な多細胞培養体がないために十分な知見は得られていない。本課題では以下を目的として研究を行った:1)長期培養可能なより生理的なヒト成熟肝細胞株の樹立、2)これに病態形成に関わる後天的遺伝子変異群を順次導入することによる、発癌過程をプロスペクティブに再現しうる人工的発癌モデルの構築、3)さらにこれと臓器を構成する各種細胞とを用いて、既報とは全く異なる自己組織化に依存しない多細胞オルガノイドの開発。種々の培養条件の探索を行った結果、肝細胞の形質を保持しつつ長期培養可能な肝細胞オルガノイドの培養法を見出した。得られたオルガノイドの形質を形態学的および網羅的遺伝子発現解析、一細胞解析等を用いて分析し、多細胞オルガノイド構築のための基盤情報を得た。また、ヒトiPS細胞においてゲノム編集を行い、肝癌の臨床検体で認められたゲノム情報を忠実に再現する遺伝子改変ヒトiPS細胞を複数株樹立した。特にウイルスゲノムが宿主ゲノムに挿入することが関与する病態形成過程において、癌化の初期段階に関わる機序を明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
病態解析オルガノイドモデル開発の基盤となる成熟形質を保持しつつ長期培養可能な肝細胞オルガノイド培養法を見出し、得られた培養体の詳細な解析を行うことができた。また、ゲノム編集により樹立した遺伝子改変ヒトiPS細胞を用いて、肝細胞系譜細胞へ分化誘導した際の形質を解析し、ゲノム要因が関与するがん化初期過程を明らかとすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトiPS細胞から星細胞への分化誘導法を改良し、その活性化状態を解析するとともに、肝細胞オルガノイドとの共培養条件を探索し、自己組織化に依存しない多細胞オルガノイドの開発を進める。
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Causes of Carryover |
病態解析オルガノイドモデル開発の基盤となる成熟形質を保持しつつ長期培養可能な肝細胞オルガノイド培養法を確立するとともに、ゲノム編集により遺伝子改変ヒトiPS細胞を樹立し形質解析を行うことができたなど、計画はおおむね順調に進捗している。しかし、次段階に研究を進めるうえで、星細胞誘導法の改良とその形質解析を行う必要が生じ、それを明らかとするために要する網羅的発現解析などの施行経費が必要である。
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