2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of human alveolar organoid culture method using complete medium
Project/Area Number |
21K19491
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森本 充 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (70544344)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
Keywords | オルガノイド / 肺胞 / 生体ヒト組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
呼吸器疾患の患者数は世界的に増加しており、人類の脅威になりつつある。呼吸器疾患の病因解明、治療法開発を強力に押し進めることができる実験モデル、創薬プラットホームの構築が急務である。最近、生体の3次元組織構造を反映する幹細胞培養法“オルガノイド培養”が開発され、世界に衝撃をもたらした。呼吸器においては肺胞幹細胞を使った肺胞オルガノイドが開発されたが、この培養系では幹細胞をサポートする肺線維芽細胞を添加する必要があり、細胞の反応や病理現象を再現するには不完全であった。そこで本研究では、病院で採取されたヒト肺組織から肺胞幹細胞を単離し、線維芽細胞や血清を含まない完全合成培地でヒト肺胞オルガノイドを作成する技術の確立を試みる。具体的には、(1)新鮮な生体ヒト肺組織の入手、(2)ヒト肺胞オルガノイドに適した培養条件の開発、(3)ヒト肺胞幹細胞の継代と保存技術の開発を実施する。完全合成培地によるヒト肺胞オルガノイドの培養系が確立できれば、ヒト呼吸器疾患を分子、細胞レベルで理解する新しいツールになり、当該研究領域を大きく変革することが考えられる。 今年度は(1)に相当する研究を実施し、神戸大学病院から生体ヒト肺組織の分与を受けるための諸手続きを完了し、病院の手術室から生体ヒト肺組織を輸送する手順を確立した。生体ヒト肺組織から幹細胞の単離に成功し、非効率ながら肺胞オルガノイド培養を行うことに成功した。本研究を通して、生体ヒト肺組織からヒト肺胞オルガノイドを作成するためのパイプラインを確立することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は新鮮な生体ヒト肺組織の入手、ヒト肺胞オルガノイドに適した培養条件の開発、について計画を進めた。神戸大学呼吸器内科の永野達也医師、および呼吸器外科の担当医と連絡をとり、術後検体の受け渡しについて入念な打ち合わせを行った。神戸大学病院で肺がん患者の肺がん患部を切除し、その検体の正常部分について切り分けて、病院内で当研究室の研究員に受け渡した。研究員は検体を生理食塩水に浸して氷冷し、厳重に密閉して研究所まで輸送した。今年度は6回の検体分与を受け、生体ヒト肺組織の入手および研究室までの輸送経路を確立することができた。 研究所に持ち込まれた生体ヒト肺組織は、P2細胞培養施設に持ち込まれ、肺胞以外の部分を外科的に切除し、消化酵素で分解され、物理的な破壊により解された。マグネティックビーズを使った手法で上皮細胞だけを回収し、一部はqRT-PCRで肺胞細胞の成分を確認し、残りはマトリゲル中に散布した。初めに当研究室で確立した完全培地と、桂研究員が前職で確立した培地を使って培養を行ってみた。その結果、非効率的ながら、回収した肺細胞の一部を増やすことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は培地の条件を検討し、さらに高効率にヒト肺細胞を増幅できる培養型に改良に努める。特に、幹細胞培養に必要されている Noggin, HGFなどの因子の添加と、炎症系サイトカインであるIL-13, 33などを加えることで培養系を改善していく予定である。 また、ヒト肺胞幹細胞の継代と保存が、本実験系を病院からの分与に依存しない系にするために必須である。オルガノイドの継代、保存は小腸、大腸、子宮内膜など他の組織で成功されている。これらを参考にしながら、市販の幹細胞保存液を試しながら、肺胞幹細胞に適切な試薬を選定する。また、凍結する細胞状態も、オルガノイドを球形のまま保存する方法と、1細胞まで消化、凝集して保存する方法を検討する。
|
Causes of Carryover |
今年度は生体ヒト組織を病院から分与を受け、研究所まで輸送する経路を確立することに注力したため、細胞培養に使う消耗品などの使用量を少なく抑えることができた. 来年度は細胞培養の条件検討が中心になるため、その分の物品費が必要になると予想している。
|
Research Products
(5 results)