2021 Fiscal Year Research-status Report
メタゲノムデータを基盤とした薬剤耐性菌に対する次世代ファージ療法の挑戦的開発
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21K19495
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植松 智 東京大学, 医科学研究所, 特任教授 (50379088)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | バクテリオファージ / 次世代ファージ療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
Acinetobacter baumanniiは、グラム陰性の環境菌で通常は弱毒菌で健康な人には無害であるが、高齢者や免疫力の低下した患者ではカテーテルなどのバイオフィルムから感染し肺炎や敗血症になることがある。1990年代前半より多剤耐性菌が出現し始め(Multi-drug resistant Acinetobacter;MDRA)、2018年5月には台湾で治療を受けて静岡市立静岡病院に再入院した患者を介して病院内に広がり、感染した4名のうち2名が死亡する院内感染も発生している。本邦では抗生物質の使用を厳格に行なっておりMDRAの出現は少ないが、新型コロナウイルス の蔓延が収束し、インバウンドの再開に伴いアジアの諸外国からの旅行者等を介してMDRAの発生は確実に増加すると考える。本研究課題では、当教室が保有する腸内ウイルスゲノム解析法とメタゲノムデータベースを利用してA. baumanniiに特異的に感染する溶原ファージを同定し、そのゲノム情報からA.baumanniiを溶菌できる酵素の単離、同定を目指すことを目的としている。グラム陽性細菌と異なり陰性細菌は細胞外膜にlipopolysaccharide(LPS)層を持つため、未だグラム陽性菌に対するエンドライシンの様な強力な溶菌活性を持ったファージ由来の酵素療法は開発されていない。令和3年度は、大阪公立大学附属病院でストックされている薬剤耐性Acinetobacter26株と標準菌(JCM6841T)と、新潟県のAcinetobacter baumanniiを豊富に含む水田由来の水と土、大阪府の緑地公園と天王寺付近の水と土のショットガンメタゲノム解析を行い、複数の種類のA. baumannii特異的ファージのゲノム情報を取得した。現在、このゲノム情報から宿主細菌膜を破壊する酵素情報の取得を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画として、理化学研究所など国内で入手可能な臨床分離株、大阪市立大学附属部病院においてカテーテル等から単離されたMDRAを入手し全ゲノム解析を行う予定であった。薬剤耐性Acinetobacter26株と標準菌(JCM6841T)を入手しており、年度内に前ゲノム解析を実施することができた。また、東京大学農学生命科学研究科との土壌解析の共同研究において、新潟県農業総合研究所のコシヒカリの水田の土や大阪府吹田市の緑地公園の土が多数のA.baumanniiを有していることを見出した。土壌から細菌DNAを抽出し、全ゲノム解析によるメタゲノム解析も行うことを予定しており、腸内ウイルスゲノム解析パイプラインを用いて、得られたA.baumanniiゲノム上のプロファージを網羅的に検出し、ファージゲノムの全長の単離、ORF決定、ファージの分類を行う計画をしていた。本年度は計画通り、新潟県農業総合研究所のコシヒカリの水田の水と土、大阪府の緑地公園と天王寺付近の水と土のメタゲノム解析を実施することができた。以上のことから、解析は研究計画通りに進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、大阪公立大学附属病院でストックされている薬剤耐性Acinetobacter26株と標準菌(JCM6841T)と、新潟県のAcinetobacter baumanniiを豊富に含む水田由来の水と土、大阪府の緑地公園と天王寺付近の水と土のショットガンメタゲノム解析を行い、複数の種類のA. baumannii特異的ファージのゲノム情報を取得した。。A.baumanniiファージの持つ遺伝子のうち、細菌に感染する際に使用するTailに付随した膜破壊酵素や、出芽に 用いる酵素を調べゲノム配列の取得を行う。得られた酵素のゲノム配列を基に、大腸菌 でファージ由来酵素のタンパク合成を行う。得られた酵素タンパクに関して、in vitro でMDRAを含むA.baumanniiに対する溶菌活性を検証する。in vitroで活性のあった酵素タンパクに対して、A.baumanniiマウス感染モデルにおいてin vivoにおける抗菌効果まで検証し、特許などの権利化を図る。
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Causes of Carryover |
A.baumanniiのゲノム解析後、ゲノムデータから抗菌酵素の同定と合成、溶菌効果の検証を次年度行うことを予定している。抗菌酵素のタンパク合成と溶菌効果の検証にかなりの費用を要すると考え、次年度の使用を考えた。
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[Journal Article] Dysbiotic Fecal Microbiome in HIV-1 Infected Individuals in Ghana2021
Author(s)
Parbie Prince Kofi、Mizutani Taketoshi、Ishizaka Aya、Kawana-Tachikawa Ai、Runtuwene Lucky Ronald、Seki Sayuri、Abana Christopher Zaab-Yen、Kushitor Dennis、Bonney Evelyn Yayra、Ofori Sampson Badu、Uematsu Satoshi、Imoto Seiya、Kimura Yasumasa、Kiyono Hiroshi、Ishikawa Koichi、Ampofo William Kwabena、Matano Tetsuro
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Journal Title
Frontiers in Cellular and Infection Microbiology
Volume: 11
Pages: 646467
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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