2022 Fiscal Year Annual Research Report
数的染色体異常による造血幹細胞制御とMDS発症機序の解析
Project/Area Number |
21K19512
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
指田 吾郎 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特別招聘教授 (70349447)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | トリソミー8 / 造血幹細胞 / 骨髄異形成症候群 / クロマチン / 数的染色体異常 / 白血病 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄異形成症候群(MDS)は、造血幹細胞より発生して分化障害・造血不全状態になり、一部は急性骨髄性白血病(AML)に進展する高齢者に好発する予後不良ながんである。近年、70歳以上の健常高齢者にも、MDSと同様のドライバー遺伝子変異を持つクローン造血が報告され注目されている。こうしたクローン造血の一部が、MDS幹細胞の発生を経てMDS発症に至るが、その病態進展の仕組みは依然として不明である。一方、染色体異常が、がんの発生と進展に深く関与することは古くから知られていた。MDSにおいても、トリソミー8やモノソミー7といった数的染色体異常が、MDSの発症や予後と密接に関連しており、診断のための判断基準でもある。また、先天性のトリソミー8モザイク(T8M)は、Warkany症候群としても知られ、発達障害に加えて、MDSや白血病を高率に発症する。このようにトリソミー8は、MDSを発症させるが、その病態は8番染色体上の責任領域・遺伝子を含めて、MDS細胞のゲノム変異・遺伝子発現変動のみの解析では明白でなかった。本研究では、鳥取大学の押村博士、香月博士が開発・実用化した人工染色体技術によって、ヒト8番染色体を導入したマウスES細胞から、+8キメラマウスの作製を試み成功した(熊本大学・荒木喜美博士の協力)。このモデルを用いて、トリソミー8による造血幹細胞制御とMDS発症の機序を解析した。+8造血幹細胞は、その自己複製能は野生型と比較して大きく変わらないが、その分化は有意に障害された。この+8幹細胞制御の分子メカニズムを理解するために、+8ES細胞、胎児・成体幹細胞のRNA-seqとATAC-seqを実施した。8番染色体だけでなく、8番染色体以外の遺伝子発現と、エンハンサー領域を含むクロマチン構造の変動が確認できた。今後は、トリソミー8の幹細胞での時空間的制御と細胞機能との関連を検証したい。
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Research Products
(3 results)