2021 Fiscal Year Research-status Report
トリプルネガティブ乳癌におけるTP53と脂質分子の相補的な細胞制御機構の解明
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21K19522
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
永橋 昌幸 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (30743918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 修二郎 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00512310)
阿部 学 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (10334674)
諸 和樹 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (10745566)
土田 純子 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (90769415)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | スフィンゴシン-1-リン酸 / TP53 / 乳癌 / 脂質メディエーター / トリプルネガティブ |
Outline of Annual Research Achievements |
トリプルネガティブ乳癌(TNBC)は、生物学的に高悪性度であり、乳癌の中で最も予後不良の一群である。スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、脂質でありながらタンパク質と同じように細胞情報伝達物質として働く脂質メディエーターであり、TP53による細胞の生死に関わる制御機構にS1Pやセラミド等の脂質分子が寄与している可能性が示唆されている。我々は、トリプルネガティブ乳癌の高悪性の病態は、遺伝子異常だけでは説明がつかず、その背景には脂質メディエーターを介した分子機構が関与していると仮説を立て、本研究で検証する。TP53の脂質メディエーター分子を介した細胞制御機構に着目し、トリプルネガティブ乳癌における病態メカニズムを解明し、新規治療法開発への研究基盤を確立することを目指す。課題AではTNBCにおけるTP53遺伝子異常とS1P分子機構の役割解明を目的とし、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術を用いて、マウスおよびヒト由来のTNBC細胞株(E0771細胞株、MDAMB231細胞株)に対し、TP53及びS1P産生酵素(SphK1、SphK2)のKO細胞を作製中である。さらにTP53の機能をより明確に評価するため、TP53変異細胞株に対して、TP53をノックインする実験も開始した。課題Bでは、バイオインフォマティクスによるTNBCにおけるTP53変異とS1Pの臨床的意義の検討を目的とし、TNBC手術切除症例に対し、血清に対するリピドミクス解析を実施し、現在臨床データと合わせて統合解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は研究代表者の施設異動があったため、課題Aおよび課題Cで用いるTP53KO遺伝子改変細胞の作製がやや遅れており、実験が少し遅れているが、次年度には作製が完了し、細胞実験を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
課題Aでは、遺伝子改変細胞を作製したのち、細胞増殖能、遊走能、浸潤能における役割をTP53変異と合わせてin vitroで分析する予定である。さらにまた作製済のSphK1KOおよびSphK2KOマウスとTP53変異発癌マウスを掛け合わせて、TP53変異とS1Pの役割をin vivoで検証する予定である。課題Bでは、リピドミクス解析の結果を臨床情報と合わせて統合解析していく。またTCGAなどの既存の網羅的ゲノム解析データベースを用い、S1P情報伝達系の解析を行い、TNBC患者におけるTP53遺伝子変異とS1Pの臨床的意義について検討していく予定である。課題Cでは、課題Aで作製したTP53KO細胞を用い、S1P受容体阻害薬FTY720、SphK1特異的阻害薬SK1-I、抗S1P抗体などのS1Pシグナル阻害剤の効果を検証する。また患者検体より細胞株・オルガノイドを作成し、TP53変異の有無と上記薬剤の治療効果をin vitroで検証する。
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Causes of Carryover |
研究代表者の施設異動により初年度の研究がやや遅れたため、試薬などの発注が遅れ、次年度使用となりましたが、次年度で消耗品として使用する予定である。
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