2021 Fiscal Year Research-status Report
Reconstruction of male infertility phenotype by the combination of susceptibility genes and environmental triggers
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21K19524
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
高島 誠司 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (40396891)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 感受性遺伝子 / ストレス / 男性不妊 / モデルマウス / 構成生物学的手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
精子形成異常を呈する『非閉塞性乏精子症・無精子症(Non-obstructive oligo/azoospermia: NOA)』は男性不妊の過半を占めるが、病態メカニズムが未解明のため、診断・予防・治療法を開発できない。この疾患は病原体感染や単一遺伝子変異が原因ではないことから、申請者は『NOAは感受性遺伝子とストレスの相互作用が生み出す多因子性疾患である』という仮説を立てた。 本研究では、NOA誘導ストレスの特定と、感受性遺伝子との組み合わせ最適化により、世界に先駆けてヒトNOAモデルマウスを開発する。そしてこの病態の発症・亢進・遷延の各過程で精子形成システム機能がどのように変容するかを明らかにするとともに、発症にかかる分子群の特定を目指す。 初年度では、申請者が開発したNOA高感受性遺伝子を有するミュータントマウスの妊孕性低下病態を亢進/改善させる遺伝的要因・環境要因の探索を進めた。まず、遺伝的要因としてIL1分子実態の遺伝型が関与することを見出した。具体的には、NOA高感受性遺伝子(Il1rn, Il1r2二重欠損)を有するミュータントマウスの不妊の原因となるIL1シグナルの分子実態が当初予想したIL1Bではなく、生理的役割・存在意義が不明なIL1Aであることを突き止めた。特に、Il1a遺伝子をヘテロで欠損しただけでも妊孕性が回復することから、IL1A活性が雄性妊孕性と強い因果関係を有することが示された。更に、マウス遺伝背景をB6からB6D2F1にすることで妊孕性が回復することを突き止めた。 一方、環境要因として着目した発熱ストレスが不妊病態を悪化される仕組みを解析し、発熱ストレスが精子形成能力低下だけでなく精巣上体炎症を惹起することを見出した。また興味深いことに、NOA高感受性遺伝子を有するミュータントマウスのメスも妊孕性を失っていることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響により実験規模の縮小を余儀なくされ、進展に有意な遅れが出た。しかし、マウスにおいてヒトNOA病態を再現するための『感受性遺伝子』『ストレス』の候補を同定し、それらが働く仕組みに関し知見を得ることができたた。加えて、このマウスのメスも妊孕性を失っていることを見出した。これらを踏まえ、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
①感受性遺伝子・ストレスの組み合わせ最適化によるヒトNOAモデルマウスの開発:次年度は、様々なストレスにより発生する分子群を体内で感知するパターン認識受容体のリガンド、及びナノシリカやチタン微粒子を投与することで、NOA病態が誘導できるかを検証する。 ②NOA病態を引き起こすサイトカインネットワークの把握:NOAマウスでIL1の下流シグナル分子を欠損させることで妊孕性が改善/低下するかを検証する。
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Causes of Carryover |
初年度に使用する予定であった研究費に関しては、①コロナ感染拡大の影響により実施実験の削減を余儀なくされたこと、②実験実施数の削減に伴い実験動物飼育数を抑制したこと、③実施実験経費を節約したこと、④初年度経費を研究代表者の機関内研究費でまかなえたこと、⑤実施実験に使用する試薬を元々所有していた試薬でまかなったこと、の5つの要因により、次年度以降への持ち越しとした。
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Research Products
(15 results)