2021 Fiscal Year Research-status Report
骨細胞における新規力学感知分子の探索を基盤にした骨恒常性の解明
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21K19554
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
中島 友紀 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (00346959)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 骨細胞 / 力学感知分子 / 網羅的機能スクリーニング / 骨細胞特異的ラベリングマウス / シングルセル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体支持の基軸である骨は、動的な恒常性を保ちながら生涯を通じて生れ変わっている。骨の恒常性は、骨表面の“実行細胞”である破骨細胞の骨破壊で古い骨が除去した後、骨芽細胞によって新たな骨形成で充填され維持されている。骨基質内に埋め込まれた骨細胞は骨を構成する細胞の大多数を占め、その細胞突起で骨内の骨細胞同士、そして、骨表面の破骨細胞や骨芽細胞とも密接な細胞間ネットワークを形成している。従って、骨細胞が力学的刺激やホルモンなど生理活性物質の感知と応答を担う“司令細胞”と考えられている。しかし、骨細胞が如何にして力学的な環境変化を感知し応答反応へと繋げ、骨恒常性を制御しているか、その全貌解明にはいまだ至っていない。 本研究提案では、骨細胞の力学的刺激の感知機構を解き明かすことで、動的な骨恒常性の学問的な理解の深化から、骨疾患制御法の分子基盤の確立へ道をつけることを目指す。研究戦略として、骨細胞の力学刺激の応答分子RANKLとSOSTをゲノム編集で蛍光および発光ラベルし、力学的負荷に伴う発現変動を指標にした新たな網羅的機能スクリーニングの構築を試みる。そして、新規マルチウェルプレート伸展培養・ライブセルイメージングシステムを開発し、全遺伝子ノックダウン実験から新たな力学感知分子を同定する。さらに、世界に先駆けた骨細胞特異的な次世代マウスジェネティクスの開発と骨細胞シングルセル解析を展開する。シングルセル解析の遺伝子階層クラスタリングと網羅的機能スクリーニングの融合から新規力学感知分子のデータベースを構築し、遺伝子改変マウスの作成から生体レべルでの機能解析を試みる。 これまでに、力学的負荷に伴う発現変動を指標にした新たな網羅的機能スクリーニングや次世代マウスジェネティクスの開発と骨細胞シングルセル解析の予備実験等が順調に実施された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
骨細胞の応答分子は、遺伝子やタンパク質の発現プロファイルの変化(上昇や低下)を標的として探索されてきた。しかし、感知分子(チャネル、受容体、接着因子など想定)は、発現の変動が観られず機能する亢進をする可能性があるため、その探索には網羅的な機能スクリーニング系の確立を鍵となる。この実験系を確立することが本研究提案の鍵となる。 骨細胞の応答分子RANKLやSOSTは、力学的な環境変化で発現制御されていることが生体レベルでも明らかにされているため、本研究提案では、RANKLやSOST遺伝子に蛍光および発光タグを融合させた新規骨細胞株をゲノム編集技術で樹立し、力学的な環境変化に伴う応答分子発現の可視化・定量化を実現する。現在、SOSTにHiBiT発光タグを融合させた骨細胞も樹立され、RANKLのHiBiT発光タグ発現骨細胞の作成にも着手できた。 また、単離骨細胞のゲノムワイドな遺伝子発現と全身臓器の発現遺伝子データベースから、新たな骨細胞特異的な遺伝子を同定し、この特異性を活用した次世代Creマウスの樹立することで、骨細胞特異的ラベリングマウスの作出から、世界に先駆け骨細胞シングルセル解析を実施した。 さらに、トレッドミルや自主的運動による運動力学負荷や尾部懸垂による力学免荷(骨粗鬆症)モデルなど、骨の変化を伴う条件で骨細胞を単離しシングルセル解析を試みるため、実験系の構築ができた。また、生体レベルでの解析を進めるため、その基盤となる胚操作技術を必要としないi-GONAD法の技術確立の確立・熟練度が向上された。
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Strategy for Future Research Activity |
骨細胞の応答分子RANKLやSOST標識骨細胞の樹立およびレンチウイルスを用いたsiRNAライブラリーによる全遺伝子ノックダウン実験から、力学的な環境変化に伴う標識応答分子の挙動変化を指標に感知分子の同定に繋げる。本大規模スクリーニングを実現するため、新規マルチウェルプレート伸展培養およびライブセルイメージングシステムの開発に注力する。骨細胞特異的ラベリングマウスの作出から、世界に先駆け骨細胞シングルセル解析を実施し、骨細胞の起源・分化により発現する全遺伝子の発現変化をプロファイリングする。さらに、運動力学負荷や尾部懸垂による力学免荷モデルなど、骨の変化を伴う条件で骨細胞を単離しシングルセル解析を試み、骨細胞の力学感知分子データベースをプラットホームにして新規力学感知分子に同定を目指す。
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Research Products
(17 results)