2021 Fiscal Year Research-status Report
軟骨細胞内Ca2+を通じた新規骨伸長促進法と骨系統疾患治療法の探索
Project/Area Number |
21K19565
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
市村 敦彦 京都大学, 薬学研究科, 助教 (10609209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植田 洋平 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (30848213)
井貫 晋輔 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (70736272)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞内カルシウム / 軟骨細胞 / イオンチャネル / C型ナトリウム利尿ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)が細胞内Ca2+を介して生理機能を発揮する分子機序を明らかにするとともに、解明した分子機序に基づいてCNPシグナル経路を活性化出来る新規化合物やCNP改変ペプ チドを探索し、軟骨細胞内Ca2+制御機構を利用した軟骨伸長進薬を開発することを目的としている。 本年度は、前半部分について主として取り組み、その結果予定通りの進捗を得た。具体的には、CNPによる軟骨細胞内Ca2+の活性化について、その分子的機序を薬理学的、および、遺伝学的手法によって解明した。一連の実験結果から、CNPはその受容体NPR2を介してcGMP産生を増加させ、これがcGMP依存的タンパク質リン酸化酵素であるPKGを活性化することで細胞内Ca2+シグナルを活性化していることがわかった。さらに、PKGは大コンダ クタンスCa2+依存的K+(BK)チャネルをリン酸化することで活性化し、その作用によって軟骨細胞において脱分極を引き起こしていることが明らかとなった。発生した脱分極はTRPM7チャネルを 介した軟骨細胞内Ca2+流入を増大させ、カルシウムカルモジュリン依存性キナーゼII(CaMKII)が活性化することにより軟骨の機能的成熟や細胞外基質の産生が亢進されていることが明らかとなった。CNPの骨伸長促進効果はTrpm7遺伝子発現に依存していることも器官培養軟骨を用いた実験からわかった。さらに、BKチャネル活性化薬がCNPに類似した骨伸長促進作用を持つことが明らかとなり、今後の骨系統疾患治療に資する知見を得ることができた。これらの成果をまとめ論文として発表した (eLife, 2022)。 計画に沿い、本学化合物ライブラリから候補化合物を探索して軟骨細胞内Ca2+シグナルを活性化できる物質を探索しはじめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、CNPの作用に寄与することを予想した軟骨細胞内Ca2+シグナルとの関連に関する基礎研究部分と、解明した分子機序に基づいて新たな骨関連疾患治療に資する物質を探索する応用研究部分を柱としている。2年にわたる研究計画のうち、1つ目の柱となる基礎研究部分を概ね計画通りに終了して論文を発表できたことから、おおむね順調に進展していると言える。2つ目の柱となる応用研究部分についても、CNP改変ペプチドの創生に向けた検討を行っており、合成が進展すれば軟骨細胞内Ca2+に対する作用を評価する予定である。また、本学化合物ライブラリより候補化合物を選定し、評価に着手しており、全体計画の進展としても概ね順調と評価して問題ないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
基礎研究部分について計画通りに終了できたので、今後も当初計画から大きく変更することなく応用研究部分へと進行させていく予定である。すなわち、CNPの改変ペプチドの創生を目指したペプチド化学によるアプローチと、化合物ライブラリを用いたランダムスクリーニングによるアプローチの両面から、軟骨細胞内Ca2+シグナルを賦活し、骨を伸ばす効果を持つ新たな物質を見つけ出すことを目指した検討を行っていく。いずれの検討についてもすでに一部進行しており、今後はより集中的にエフォートを投入することで研究を加速させたいと考えている。良い候補物質が得られた場合においてはin vivoでの薬効薬理評価などより実用化を志向した評価も実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
研究開始当初よりも、基礎研究部分についての進捗が効率的に得られた。また、論文投稿後についても修正や追加実験の要求が想定していたよりも少なかったことから、そちらへ当てる予定としていた物品費にややゆとりが生じたことから差額が発生した。また、応用研究部分については現状まだin vivoでの評価等を行える状況には至っておらず、そのために見込んでいた消耗品購入費用が次年度へと繰り越されたため差額が発生した。今後は応用研究部分により力を入れて取り組み、in vivo薬効薬理評価が可能な候補化合物を見つけ出すとともに、実際に評価実験を実施していく予定である。そのために本年度に生じた差額分を充当してより研究を加速させていく。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] C-type natriuretic peptide facilitates autonomic Ca 2+ entry in growth plate chondrocytes for stimulating bone growth2022
Author(s)
Yuu Miyazaki#, Atsuhiko Ichimura#, Ryo Kitayama, Naoki Okamoto, Tomoki Yasue, Feng Liu, Takaaki Kawabe, Hiroki Nagatomo, Yohei Ueda, Ichiro Yamauchi, Takuro Hakata, Kazumasa Nakao, Sho Kakizawa, Miyuki Nishi, Yasuo Mori, Haruhiko Akiyama, Kazuwa Nakao, Hiroshi Takeshima
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Journal Title
eLife
Volume: 11
Pages: e71931
DOI
Peer Reviewed
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