2022 Fiscal Year Research-status Report
CRISPR/Cas系による新型コロナウイルス感染と気道上皮バリア破壊機構の解明
Project/Area Number |
21K19567
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大森 孝一 京都大学, 医学研究科, 教授 (10233272)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝長 啓造 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (10301920)
水田 匡信 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (20777875)
宮本 達雄 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (40452627)
大西 弘恵 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (50397634)
池川 雅哉 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (60381943)
山本 典生 京都大学, 医学研究科, 准教授 (70378644)
岸本 曜 京都大学, 医学研究科, 助教 (80700517)
竹澤 俊明 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, グループ長 (50301297)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | COVID-19 / CRISPR/Cas9システム / ヒトiPS細胞由来気道上皮移植ラット / SARS-CoV-2 Spikeタンパク質 / シュードウイルス / ノックアウトスクリーニング / オミクロン株 |
Outline of Annual Research Achievements |
COVID-19に対しワクチンは個々のウイルスにのみ有効で、突然変異による無効化に対応できない。そこで適応範囲の広い治療薬が求められるが、現在試用されているRNA阻害薬等で確立されたものはない。申請者が研究対象とする気道上皮細胞は感染の入り口である。気道上皮細胞へのウイルス侵入と細胞間バリア破綻をブロックすることは重要であり、これにより感染や重症化を防御できるのではないかと考えた。そこで本研究では、新規メカニズムに基づく創薬ターゲットとなりうるタンパク質の同定を目的とし、近年確立されたCRISPR/Cas9システムによるゲノムワイドなハイスループットノックアウト法等によりSARS-CoV-2感染と細胞間バリア破綻に関与するタンパク質の網羅的探索に挑戦する。SARS-CoV-2 Spikeタンパク質発現シュードウイルスとヒトiPS細胞由来気道上皮移植ラットを同定タンパク質検証に用いることでin vivoでヒト細胞特異的な反応の検討を可能にし、生体に近い解析を行う。これによりCOVID-19治療薬のターゲット候補が見つかれば同属ウイルスによる新興感染症にも対応しうる可能性があり、波及効果は大きい。 今年度はSARS-CoV-2 Spikeタンパク質発現シュードウイルスの作製とACE2恒常発現HEK293T細胞及びヒトiPS細胞由来気道上皮への感染条件の確立と、ヒトiPS細胞由来気道上皮移植ラットへの噴霧によるウイルス感染実験を行った。また、スクリーニングに用いるCalu3細胞への感染条件の検討等を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度から引き続き研究分担者の朝長により作成されたSARS-CoV-2 Spikeタンパク質発現シュードウイルスを用い、ACE2恒常発現HEK293T細胞及びヒトiPS細胞由来気道上皮への感染実験を行った。感染効率が低かったため、のちのin vivo事件に用いる為に感染効率の向上が必要であると考えられた。ウイルス濃度を上げ、また上気道に感染特異性があるとされている変異株を用いることで感染効率の向上が見込めるのではないかと考え、オミクロン株の変異を持つSARS-CoV-2 Spikeタンパク質発現シュードウイルスをウイルス受託サービスで作製した。このオミクロン株変異SARS-CoV-2 Spikeタンパク質発現シュードウイルスを用いACE2恒常発現HEK293T細胞及びヒトiPS細胞由来気道上皮への感染実験を行い、感染条件を確立した。 昨年度に引き続きIn vivo実験での感染効率の検討にむけ、ヒトiPS細胞由来気道上皮の移植後生着効率を向上させるため、研究分担者の竹澤により作製されたブタアテロコラーゲン製のビトリゲル膜を用い、市販のウシビトリゲルとの生着効率における有効性の比較検討を行った。この結果をもとにヒトiPS細胞由来気道上皮移植ラットを作製した。 ヒトiPS細胞由来気道上皮移植ラット気管への噴霧によるシュードウイルス感染実験を行った。現在、感染部位の組織を回収し、免疫染色による組織学的解析により感染効率を検討中である。また、スクリーニングに用いるCalu3細胞の培養条件やシュードウイルス感染効率の予備検討を行ったが増殖や感染効率が悪く、培地条件の改良などを進めている。また、Envelopeタンパク質を用いた免疫沈降による結合タンパク質探索に用いるためのEnvelopeタンパク質クローニングの準備を進めた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後以下の検討を行う。 I. CRISPR sgRNAライブラリを用いた機能欠損スクリーニングによりSARS-CoV-2の細胞内侵入に必要なタンパク質を探索する。Calu-3にCas9遺伝子を挿入し、恒常的に発現する株を作製し、ここにsgRNAライブラリを導入し、シュードウイルスを感染させる。感染が起こらなかったGFP-の細胞を次世代シークエンスにより解析し、挿入されたsg配列を検出し欠失遺伝子を同定する。またII. Envelopeタンパク質を用いた免疫沈降法により、上皮バリア破綻の際のターゲットとなるタンパク質を探索する。Calu3に、テトラサイクリン等でエピトープタグ付きEペプチドを発現誘導して免疫沈降を行い、結合タンパク質を同定する。そして、III. 網羅的に同定されたタンパク質が細胞内でどのように相互作用しウイルスの細胞内侵入とバリア破壊を実行するのか、ヒトiPS細胞由来気道上皮のin vitro, in vivo結合アッセイ系を用いて解析する。Iの同定遺伝子の発現をqPCR等により確認し、感染過程への関与を検討する。またIIの同定タンパク質のTJ破綻への関与を検討する。さらに、I, IIの同定タンパク質の、感染、バリア破綻における機能を免疫染色法、免疫電子顕微鏡法や免疫沈降法等で解析する。さらに気管にヒトiPS細胞由来気道上皮を移植したラットを用い、in vivoでの感染時の同定タンパク質の挙動を解析する。これらの解析を通して新たな治療薬ターゲットの同定を目指す。
|
Causes of Carryover |
スクリーニングなどの条件が決定できず、次世代シークエンスによる解析などが行えなかったため、次年度使用額が生じた。研究期間を延長し、2023年4月以降に研究を進める予定である。
|