2021 Fiscal Year Research-status Report
時系列立体脳機能イメージング法による島皮質神経回路の覚醒下における動作機構の解明
Project/Area Number |
21K19616
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小林 真之 日本大学, 歯学部, 教授 (00300830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 嘉則 日本大学, 歯学部, 教授 (20212607)
尾崎 弘展 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (30747697)
大橋 一徳 日本大学, 歯学部, 助教 (90617458)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | カルシウムイメージング法 / 島皮質 / 侵害刺激 / 逃避行動 / GCamp6s / ニューロン活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度遂行した実験プロジェクトは,以下の2つである。 一つは,麻酔下マウスの島皮質における時系列空間Ca2+イメージング法の確立である。動物には,細胞内Ca2+濃度によって蛍光強度が変化するGCamp6sを発現したトランスジェニックマウスを用いた。同マウスに対して,イソフルラン麻酔下にて脳深部計測用プリズムを頭蓋骨の外側から埋入する手術手技を開発した。この手技により,側頭部にある島皮質の表面を頭頂から観察することが可能になった。さらに,埋入したプリズムを通して二光子レーザー顕微鏡を使って島皮質ニューロンの発する蛍光強度を観察することで,イソフルラン麻酔下で自発的に放電する島皮質ニューロンの活動を記録することに成功した。 二つ目として,覚醒マウスへの侵害刺激に対する逃避行動の記録装置の作製に取り組んだ。まず,赤色レーザー光照射による侵害刺激装置を作製した。次に,覚醒動物の手足を自由にさせた状態で頭部を固定し,動物の意志に応じてトレッドミルが動くことによって,逃避運動が計測できる装置を開発した。この逃避運動測定装置を用いることによって,運動量(頻度,速度,加速度)を定量化することが可能になった。さらに,運動時の動物の顔面部を暗視野カメラで撮影し,眼球露出度や瞳孔の大きさを定量することができるプログラムを開発した。侵害刺激装置と逃避運動測定装置を組み合わせることによって,顔面部に赤色レーザー光を照射して生じる熱による痛み刺激に対して,覚醒動物が反応してとる逃避行動を定量化することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画における実施スケジュールでの達成目標は,(1)二光子レーザー顕微鏡による麻酔下動物の島皮質における時系列空間Ca2+イメージング法の確立と,(2)赤色レーザー光照射による侵害刺激に対して起こす逃避行動の定量化であった。 研究実績に記載したとおり,ほぼこの目標は達成している。ただし,観察に成功した動物の個体数は3例と限られているため,令和4年度にさらに成功例を増やして手技の完成度を高めていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,昨年度の研究によって確立した手法,すなわち,頭蓋に埋め込んだプリズムを通しての二光子レーザー顕微鏡によるCa2+イメージング法を覚醒したGCamp6sトランスジェニックマウスに応用する。 具体的には,最初のステップとして,昨年度開発した侵害刺激装置と逃避運動測定装置を用いて覚醒したGCamp6sトランスジェニックマウスの髭部に熱刺激を与える。次に,二光子レーザー顕微鏡を用いて,島皮質におけるニューロン活動を経時的に3次元で計測し,痛み刺激に対する島皮質ニューロンの応答を記録する。そうして得られるデータは,膨大な情報量をもつため,効率的に処理するプログラムの開発にも併せて取り組む。最終ステップとして,活動したニューロンの空間分布および相関関係を明らかにし,覚醒下の動物における島皮質ニューロンの痛み刺激に対する時空間的特性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
校舎移転に伴い,動物飼育施設および動物実験室が年度後半に閉鎖されたため,動物実験ができない時期が生じ,計画していた実験の一部が遂行できなかったため,残金が生じた。次年度初めには,移転が完了して動物実験が再開できるため,繰越金と令和4年度助成金を併せて使用し,ペースを上げて実験を行う予定である。
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Research Products
(3 results)