2021 Fiscal Year Research-status Report
寒冷応答miRNA発現プロファイルによる凍死診断の革新的アプローチ
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21K19653
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
梅原 敬弘 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (60617421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村瀬 壮彦 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (40823315)
池松 和哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80332857)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 低体温 / microRNA / 恒常性維持 |
Outline of Annual Research Achievements |
凍死診断は、左右心臓血の色調差や胃十二指腸粘膜下出血、紅色調死斑など、寒冷暴露により生じる所見を組み合わせることで行われる。しかし、これらの所見は、凍死以外の死因においても認められるため、凍死に特異的な所見とはいえず、確定診断を行うことは難しい。従って、低体温の分子メカニズムを解明し、凍死診断を補完するための新規分子マーカーを同定することが重要である。本研究は、低体温の分子メカニズムを解明するために、哺乳類の恒常性維持に重要な役割を果たす腸腰筋に着目し、軽度・中等度・重度の低体温ラットモデルを作製し、マイクロアレイ及び次世代シーケンシングを駆使して、体温依存的microRNA(miRNA)及びmRNAの網羅的発現解析及び機能解析を行なった。 その結果、特定のmiRNAの発現は、体温の低下に伴い減少し、また、TargetScanによりmiRNAの発現制御を受けることが推測された標的遺伝子発現は、重度の低体温によってのみ有意に増加した。ルシフェラーゼレポーターアッセイは、標的遺伝子発現がmiRNAによって調節されていることを示唆した。以前の報告において低体温下で発現減少を示した標的遺伝子と本研究で検討した標的遺伝子のsiRNAを用いた発現抑制検討は、両遺伝子の相互作用により、腸腰筋細胞のCaspase活性とATPレベルを変化させることを示唆した。これらの結果は、miRNAが体温低下に伴い不活性化し、それによって標的遺伝子発現が促進することで、腸腰筋細胞のアポトーシスが抑制される可能性があることを示した。従って、特定のmiRNA-mRNA軸は、極度の低体温下で恒常性を維持するための生体防御反応の一部である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
動物実験においては、当初の計画以上に進展しているが、ヒト検体の集積が遅れているため。また、コロナの影響により実験に必要な試薬の納品が遅れたため。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子発現解析ソフト及び分子生物学的手法を用いて、miRNA及びmRNAの発現データの相関検討を行い、mRNAがmiRNAに制御されている可能性を検証し、低体温の分子メカニズムを捉える。相関が認められた遺伝子から随時、低体温動物モデル及び実症例における発現検討を実施する。研究計画は順調に進展しているため、研究計画に特別な変更などはないが、検体の集積においては、他機関(他大学法医学教室)への協力を仰ぐことを考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していたものとは異なる試薬が必要となり発注したが、コロナ情勢により納品が間に合わず次年度使用が生じた。繰り越した研究費は、試薬等の購入に充てる。
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