2021 Fiscal Year Research-status Report
途上国HIV治療プログラム脱落者の追跡、復帰啓発と病態解析
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21K19657
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
上野 貴将 熊本大学, ヒトレトロウイルス学共同研究センター, 教授 (10322314)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | HIV感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
国連エイズ合同計画(UNAIDS)の主導によって、サブサハラアフリカなどの貧困地域においても抗HIV薬へのアクセスが急速に改善されているが、治療プログラムからの脱落者が20~30%に及ぶなか、2030年AIDS Zeroという野心的なミッションの達成には不十分と推定されている(UNAIDS報告)。本研究では、我々がタンザニア(HIV陽性者が約5%)に構築した拠点で、HIV陽性者のレジストリー解析と脱落者の積極的な追跡によって治療プログラム脱落者の実態を解析する。本年度は、Mnazi Mmoja Hospital (Dr Lucy Massawe)とMuhimbili National Hospital (Dr Amina Mgunya)でリクルートした初診の患者(概ね200名)を対象として、レジストリー解析と、メッセージアプリ、電話、あるいは個別訪問による追跡調査を試みた。具体的には、本研究への参加に関してインフォームドコンセントを得た対象者にムヒンビリ健康科学大学まで来てもらい、専門看護師のカウンセリングによる治療プログラムへの復帰啓発とともに、治療プログラムから脱落した経緯や、服薬中断の状況などの質問票に記載してもらう。EDTA採血菅を用いて採血後(20ml以下)、検体は速やかに血漿と末梢単核球に分離し、液体窒素タンクにて保管している。これらの検体を用いて今後アッセイを進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19による制限のため、現地の医療機関での活動が計画通りに進まなかったため。この状況は著しく改善が進んでおり、この問題は近いうちに解決される見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに採取した血液検体の一部を用いて、ウイルスRNAおよびDNA定量、リンパ球数、炎症マーカー、サイトカイン定量などの生化学検査をサイトメトリービーズアッセイにて測定する。残りの検体(血漿およびPBMC)を用いて、HIVに対する中和抗体活性と、抗体依存性細胞傷害活性を評価する。また細胞内染色法により、HIV-1 Gag特異的なCD4およびCD8陽性T細胞の表現型を解析するとともに、これらの細胞群による抗ウイルス活性を解析する。自然感染経過(治療なし)では、ヒトゲノム6番染色体に位置するHLAクラスI遺伝子多型がHIV感染症の予後と強く相関することが知られている。たとえば、エリートコントローラーにはHLA-B57保因者が有意に多い。そこで、HLAクラスIに加えて、感染免疫で重要な役割を担う他の遺伝子座(たとえばHLAクラスIIやチュラルキラー細胞に発現するKIRなどのレセプター群)の多型を次世代シークエンサーにて解析する準備を進める。
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Causes of Carryover |
COVID-19に伴う現地の医療機関での行動制限のため、タンザニアにおける研究対象者のリクルートや血液検体の採取に多少の遅れが生じたため。
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Research Products
(5 results)