2021 Fiscal Year Research-status Report
虐待の早期発見を目指した血中マーカー分子の確立-萎縮胸腺の新機能-
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21K19663
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
小森 忠祐 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (90433359)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 虐待 / 胸腺 / ストレス / FGF23 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究実施計画に記載した虐待モデルのうち、“少年・青年期虐待モデル[絶食モデル(ネグレクト)を用い、(1)fibtoblast growth factor(FGF)23の新規虐待マーカーとしての可能性の検討、及び(2)虐待時の胸腺より産生される新規分子の探索を行った。 (1)について、FGF23の遺伝子発現をリアルタイムPCR法により解析したところ、上記の虐待モデルマウスの胸腺において増加が認められた。また、FGF23タンパクの胸腺内における局在を検討した。胸腺皮質上皮細胞のマーカーであるサイトケラチン8、及び胸腺髄質上皮細胞のマーカーであるサイトケラチン5に対する抗体を用いて免疫染色法にて検討したところ、FGF23はいずれのマーカー分子とも共存が少なく、胸腺上皮細胞には発現していない可能性が示唆された。次年度は、間葉系細胞のマーカーであるER-TR7に対する抗体を用いてさらなる検討を行う。次に、虐待モデル完成後に虐待要因を取り除き、血中FGF23の増加持続時間を経時的に検討した。絶食後の再摂食によるFGF23の増加持続時間を検討したところ、再摂食後6時間目においても増加の持続が認められた。 (2)について、絶食モデルの胸腺と正常胸腺の胸腺組織全体を用いてRNAシークエンス解析を行い、両組織における遺伝子発現を比較し、虐待のマーカーとなりうる新規分子を解析した。遺伝子オントロジーのエンリッチメント解析により、上皮細胞の分化に関与する遺伝子群の挙動が大きく変動していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、“少年・青年期虐待モデル[絶食モデル(ネグレクト)を用い、(1)FGF23の新規虐待マーカーとしての可能性の検討、及び(2)虐待時の胸腺より産生される新規分子の探索を行い、FGF23が虐待要因を取り除いた後でも発現増加が持続することや、絶食時には胸腺上皮細胞の分化に関与する遺伝子の変動が起こることが明らかとなった。FGF23の絶食時の胸腺における局在は明らかになっておらず、次年度に行う予定である。胸腺上皮細胞は、T細胞の分化過程に関わる因子を産生することで近年注目されており、栄養欠乏時においても胸腺上皮細胞の分化が誘導されていることは興味深く、虐待時に産生される因子を探索する上で大いに役立つ結果である。。以上のことより、本年度の研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度得られたRNAシークエンス解析より、虐待のマーカー分子となる候補を取り上げ、新規虐待マーカーとしての可能性を検討する。具体的には、得られた新規分子について、上記の虐待モデルの胸腺における発現解析(リアルタイムPCR法、ウエスタンブロット法、in situ hybridization法、及び免疫染色法)、及び血中濃度の測定(ELISA法)を行う。 また、絶食モデルの胸腺と正常胸腺における包括的一細胞遺伝子発現解析を実施し、両組織における細胞集団の差異を検討する。 さらには、新規虐待マーカーを産生する細胞のストレス応答の検討を行う。上記実験で同定した新規虐待マーカーを産生する細胞の一次培養系において、様々なストレス負荷(血清除去、炎症性サイトカインによる刺激など)を行い、それらの細胞におけるストレス応答機序を解明する。 上記の実験を、少年・青年期虐待モデル[絶食モデル(ネグレクト)]に加え、拘束ストレスモデル[(心理的虐待)]も用いて行う。
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Causes of Carryover |
本年度、絶食モデルの胸腺と正常胸腺における包括的一細胞遺伝子発現解析を実施し、両組織における細胞集団の差異を検討する予定であったが、目的とする細胞が上皮細胞や線維芽細胞であり、細胞の調整に難航した。次年度に再度行う予定である。
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