2022 Fiscal Year Research-status Report
Mother and child health support from breast-feeding period throughout the life: Elucidating lipid quality and nutritional physiology of human breast milk
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21K19664
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
山本 登志子 (鈴木登志子) 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (60301313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡崎 愉加 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (50224001)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 母乳 / リピドミクス解析 / 多価不飽和脂肪酸 / 脂質メディエーター |
Outline of Annual Research Achievements |
乳汁の質は,子の将来の体質や健康,疾病罹患リスクに影響すると考えられる.母乳中の脂質の特性や,栄養学的意義の詳細は明らかではない.そこで,本研究では,乳汁の脂質成分組成を明らかにし,それを決定する酵素を明らかにする.さらに,それが子の成長や将来の健康へおよぼす影響について検討する. ヒト母乳とウシ生乳のリピドミクス解析より,ヒト母乳では,① 遊離脂肪酸が多く,消化機能の未熟な乳児にとって効率が良い ② 生理活性脂質の材料となる多価不飽和脂肪酸(PUFA),特にn3系脂肪酸が豊富 ③ 炎症収束性脂質メディエーターが非常に多く,子の免疫機能の調節やアレルギー予防などが期待できるなどの特性を有することがわかった.さらに,一般的な食品や生体組織では低レベルであるn3系脂肪酸代謝産物の18-HEPEが代謝産物の中で最も多く含有された.その作用は,未解明な部分も多いが,マウスにおいて心不全の予防効果があることや,抗炎症作用を有することが報告されている.次に,乳汁中脂質組成がヒト型であるマウスを対象として関連酵素の発現動態を調査し,母乳中脂質の質を決定する酵素を探索した.細胞質型ホスホリパーゼA2(cPLA2)アイソザイムが,乳腺の発達や泌乳に相関して発現量が上昇することを見出し,そのリコンビナント酵素を用いた酵素活性測定の結果,リン脂質のsn-2位の不飽和脂肪酸,特にアラキドン酸(ARA)やエイコサペンタエン酸(EPA)の切り出しによく働くことが分かった.よって,本酵素が母乳の脂質の質を決定する主要な酵素の一つであることが示唆された.さらに,母親の食事による母乳の「脂質の質」の変化を明らかにするために,授乳婦を対象として,油脂摂取の介入研究を行い,引き続き,リピドミクス解析によって母乳中脂質の質の変化を明らかにする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト母乳,ウシ生乳,マウス乳汁のリピドミクス解析を行ったところ,比較的に,ヒト母乳やマウス乳汁では遊離脂肪酸,不飽和飽和脂肪酸,ω3系脂肪酸,炎症収束性脂質メディエーターが多いことを明らかにした.次に,ヒト型乳汁組成を有するマウスを対象として,乳腺組織における経時的な酵素の発現動態を解析したところ,cPLA2アイソザイムが,乳腺発達や泌乳に関連することを見出した.そのcPLA2アイソザイムは,これまで酵素特性や臓器分布を含めて機能未解明の酵素である.本研究において,その特異的な臓器分布が明らかとなり,特に泌乳期の乳腺で最も高く発現することを見出し,その発現レベルは皮膚でも同程度であったが,その他には消化管でそれよりも弱い発現が見られるだけで,他の臓器ではほとんど検出されなかった.このことからも,本酵素が泌乳期乳腺に重要な酵素であることが推定される.そこで,そのヒトリコンビナント酵素を作製し,in vitroでの酵素学的特徴について,酵素学的な解析を行ったところ,リン脂質のsn-2位の不飽和脂肪酸の切り出しに働き,ARAやEPAをもつリン脂質を良い基質とするが,ドコサヘキサエン酸(DHA)をもつリン脂質には比較的親和性が低いことが分かった.頭部の構造では,コリンやエタノールアミンをもつリン脂質を良い基質とするが,セリンをもつリン脂質はあまり良い基質としない. 授乳婦を対象とした油脂摂取介入研究として,多価不飽和脂肪酸組成の異なる2種の油脂を付加的に摂取させて,その間の乳汁を採取した.一部の脂肪酸分析の結果から,摂取する油脂の構成に関連して,乳汁中の多価不飽和脂肪酸含有量が変化することを見出し,授乳婦の摂取する食事中脂質の質が母乳中脂質の質に影響することが示唆された.次年度には,さらに網羅的な脂肪酸とその代謝産物について解析を進める予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究より,乳腺発達や泌乳,乳汁中脂質成分組成の決定に重要なcPLA2アイソザイムが見出された.この酵素は,これまで,その生体内での酵素活性や基質親和性を含めた生理的意義が報告されていない酵素である.その酵素の発現分布は,非常に臓器特異的であり,特に泌乳期の乳腺で高発現する新しい所見を得た.酵素学的解析より,in vitroでの基質親和性の一端が明らかとなったが,今後は,さらに詳細な酵素特性と,乳腺での脂質組成への寄与の解明を目指す. 授乳婦を対象とした,油脂摂取による母乳中脂質成分組成への影響を調査する研究では,ヒト母乳の広範囲なリピドミクス解析を実施するために,その系の構築を行った.また,回収した母乳サンプルより,一部のサンプルを用いて予備的な検討を行い,脂肪酸組成の変化を分析した.今後は,様々な脂肪酸とその代謝産物についての一斉解析を目指して更なる解析系の改善に取り組み,全サンプルの網羅的脂質成分解析を実施する.
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Causes of Carryover |
コロナ禍において,ヒトを対象とした研究の遅延と,海外輸入試薬の入荷遅延などにより,次年度へ延期しての研究実施が必要となったため。
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Research Products
(21 results)
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[Journal Article] Divergent dimethylarginine dimethylaminohydrolase isoenzyme expression in the central nervous system2022
Author(s)
Kozlova AA, Ragavan VN, Jarzebska N, Lukianova IV, Bikmurzina AE, Ruberts E, Suzuki-Yamamoto T, Kimoto M, Mangoni AA, Gainetdinov RR, Weiss N, Bauer M, Markov AG, Rodionov RN, Bernhardt N.
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Journal Title
Cellular and Molecular Neurobiology
Volume: 47
Pages: 2273~2288
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Lipid profiling reveals the presence of unique lipid mediators in human milk from healthy and mastitic subjects.2022
Author(s)
Yuki Nagasaki, Erika Kawai, Saya Maruoka, Miho Osumi, Izumi Tsukayama, Yuka Okazaki, Yoshimi Miki, Kei Yamamoto, Makoto Murakami, Toshiko Suzuki-Yamamoto.
Organizer
17th International Conference on Bioactive Lipids in Cancer, Inflammation and Related Diseases 2022
Int'l Joint Research
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