2021 Fiscal Year Research-status Report
回復期待度による新規リハビリテーション指針確立に向けた白質神経線維の可塑性の解明
Project/Area Number |
21K19705
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中嶋 理帆 金沢大学, 保健学系, 助教 (60614865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 光俊 金沢大学, 医学系, 教授 (20334774)
木下 雅史 金沢大学, 医学系, 講師 (50525045)
篠原 治道 金沢大学, 医学系, 客員教授 (20135007)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 可塑性 / 神経繊維 / 脳 / リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,脳には可塑性があることが知られているが,可塑性は大脳皮質で起こり,白質神経線維では起こらないと考えられてきた.申請者は覚醒下手術における脳機能評価者として白質神経線維の機能を直接的に調べてきた中で,病変が脳機能を司る白質神経線維上に進展しても,脳機能が損なわれていない場合があることに気付いた.これは白質神経線維の可塑性によるものと推察される.本プロジェクトの目的は脳内を走行する各白質神経線維束における可塑性の有無とその限界を明らかにすることである.脳の可塑性の有無はリハビリテーション医療において極めて重要な意味を持つ.それは,脳の可塑性が期待できるか否かにより,早期から脳機能自体の改善を目指したリハビリテーションを優先するか,それとも代償手段の獲得を目指すか,治療方針が180度異なるからである.本研究より,脳可塑性を軸とした新規リハビリテーション治療指針の提唱を狙う.本研究プロジェクトは芽生え期ではあるが,リハビリテーション学および脳科学における歴史の中で確立されてきた“皮質の損傷は回復するが白質線維の損傷は回復しない”という固定観念に挑戦する革新的プロジェクトである. 初年度は,まず白質神経線維の損傷と回復の有無の検証を試みた.その結果,一つの神経線維束の中には不可侵領域と,障害を来さない,もしくは回復可能な領域が存在することが分かった.2年目は初年度の研究成果を発展させ,神経線維毎に回復可能な領域と不可能な領域を同定するとともに,可塑性が働く領域の限界を明らかにする.さらに,その回復のしやすさは神経線維により差があるかについても検証する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は神経線維の不可侵領域の同定を試みた.初年度の目標であった白質神経線維の損傷と回復の有無の検証を行う過程において,一つの神経線維束の中にも損傷してはいけない領域,すなわち不可侵領域と,損傷したとしても障害を来さない,もしくは回復可能な領域が存在することが分かった.そこで,特に上縦束,帯状束,前頭斜走路に焦点をあて,不可侵領域を同定した.各々の不可侵領域が損傷されると高い確率で障害が生じる一方,不可侵領域に至らなければ機能は低下することなく維持された.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は初年度の研究成果をさらに発展させ,神経線維毎に回復可能な領域と不可能な領域を同定するとともに,可塑性が働く領域の限界を明らかにする.さらに,その回復のしやすさは神経線維により差があるかを検証する.2年目には,研究成果についての論文発表も計画している.
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Causes of Carryover |
予定していた学会参加に伴う旅費が,新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,Web開催となったため,若干の余剰が生じた.2年目に異なる学会への参加をすでに計画しており,問題ない.
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