2021 Fiscal Year Research-status Report
Identification of novel factors mediating the effects of environmental enrichment in the absence of voluntary exercise on psychiatric disorders
Project/Area Number |
21K19714
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吾郷 由希夫 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (50403027)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 環境強化 / 精神疾患 / 運動 / マウス / 神経細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
1947年にHebbにより提唱された実験的概念である“environmental enrichment(豊かな環境)”は、通常よりも大きな飼育ケージに、輪回し車(running wheel)をはじめとする様々な物体をランダムに配置することにより、運動、知覚、認知といった刺激を強化した環境を意味する。本研究では、豊かな環境飼育といった環境強化による疾患発症の抑制効果に関わる因子の解析を、複数の異なる環境による差異を利用して進め、精神疾患の予防あるいは克服のための新たな方法論の構築と候補分子の同定を目指している。我々はこれまでに、統合失調症やうつ病、心的外傷後ストレス障害のリスク因子である神経ペプチドPACAP(pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide)の遺伝子欠損マウスの解析を進め、本マウスの示す行動学的異常や海馬神経新生の障害、神経細胞のスパイン密度の低下などの神経形態学的異常が、幼少期の生育環境により大きく影響を受けることを明らかにしてきた。そのなかで、幼若期の環境強化飼育により、PACAP遺伝子欠損マウスの情動行動異常や認知機能障害が発症しないことを見いだしたが、同期間、飼育ケージ内に輪回し車を入れることによる自発的運動の促進だけでは効果がみられなかった。一方、輪回し車を含まない豊かな環境負荷によって、通常の環境強化と同程度の病態発症予防効果が得られた。さらに本年度は、自発的運動の促進に依存しない豊かな環境飼育のなかで、どういった因子が精神疾患発症の抑制に寄与しているのかを明らかにするため、同飼育負荷を行ったマウスの海馬ならびに大脳皮質前頭前野の二つの脳領域においてRNAシーケンス解析を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデルマウスでの複数の環境飼育の影響を解析し、またその分子メカニズム解明のため、脳サンプルを調製し、網羅的遺伝子発現解析を実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
環境要因により影響を受ける遺伝子について非常に多くのデータが得られたため、どういった分子に着目して検討を進めるか、パスウェイ解析、GO解析などバイオインフォマティクス解析の結果と文献等の既知情報から絞り込みを行い、培養神経細胞を用いて検証を行う。
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Causes of Carryover |
RNAシーケンス解析の実施費用が、当初予定の見積額よりも安価になったため、次年度使用額が生じた。解析候補となる分子が複数見つかったため、今後、培養神経細胞での検討に有効に使用する。
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