2022 Fiscal Year Research-status Report
AI搭載ガスクロマトグラフを応用した呼気分析によるNASH進行非侵襲判定法の開発
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21K19727
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
石川 智久 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (10201914)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 桃生 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (30804819)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | NASH / 肝線維化 / 揮発性有機化合物 / 非侵襲的診断 / 治療薬スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の一部は、肝線維化を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)へと進行し、生存率が大幅に低下する。そのため、NASH治療法の開発は喫緊の課題といわれているが、現状、特異的治療薬はない。その一因として、動物実験に利用可能なNASHの簡易的な判定方法がないことが挙げられる。申請者らは、呼気に含まれる揮発性有機化合物(呼気中VOCs)が肝代謝機能に影響されることに着目し、肝線維化が呼気中VOCsの構成(ブレス・プリント)に影響する可能性を考えた。本研究では、呼気分析による簡易的なNASH進行非侵襲判定法の確立を目指すとともに、NASH治療薬スクリーニングへの応用について検証し、NASHに特徴的なVOCsを同定し、NASH発症に至るリスク因子やNASH治療薬のターゲット分子の提案に繋げることを目的とした。 NASHモデルを含む発生機序の異なる3種類の肝疾患モデルマウスの作製を行い、教師データの取得を行った。肝疾患モデルマウスは、食餌誘発性NASHモデルをコリン欠乏高脂肪食CDAHFDの12週間給餌、GAN dietの30週間摂餌により、また薬物誘発性肝線維化モデルを15週間のthioacetamide腹腔内投与により作製した。各モデルでの病態段階は、肝臓の薄切切片を用いた組織染色により確認した。可搬型AI搭載ガスクロマトグラフを用いたディープラーニングによる判別モデルの構築を試みたが、初年度は判別正解率が50%程度と非常に低い値しか得られなかった。そこで2年目は、得られたブレス・プリントを基に特徴量を抽出後、判別に最適な特徴量を選択し、15種類の機械学習アルゴリズムを用いて判別モデルの構築を試みた。その結果、感度88.7% ± 2.6%、特異度97.6% ± 1.3%、正解率93.6% ± 0.9%の判別モデルを構築することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝疾患モデルは作製までに長い時間を要するが、前年度に引き続き、NASHモデルを含む発生機序の異なる3種類の肝疾患モデルマウスを作製し、各病態段階における呼気中VOCsの回収・解析を行った。その結果、判別モデルを構築可能な教師データ数の収集、さらには高確率で判別可能なモデルまで構築できたことから、本研究は概ね順調に進展していると判断した。ただし、約半年間、静岡県立大学動物実験センターの空調工事があり、長期間を要する肝疾患モデルマウスを作製する実験を中断せざるを得なかった。そのため、本研究の3年目に予定している、NASH発症前後で変化するVOC成分の同定を目指す実験に供される、ガスクロマトグラフ質量分析計用のサンプル回収は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、構築した判別モデルを用いて、判別への貢献の大きい特徴量(呼気中VOCs)を特定し、NASH発症前後に特徴のある呼気中VOCsを回収後、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いてその成分を同定する。この成分同定は、NASH判定の検出感度の向上に資するだけでなく、NASH発症に至るリスク因子やNASH治療薬の新たなターゲット分子の提案への発展も期待できる。さらに、申請者らが既に肝脱線維化作用を示すことを見出した化合物をNASHモデルに投与した際のブレス・プリントの変化と肝組織像(線維化や炎症・傷害の回復)との照合を行い、本判定法がNASH治療薬のin vivoスクリーニングとして応用できることを検証する。
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Causes of Carryover |
静岡県立大学動物実験センターにおいて約半年間の空調工事があったため、この間、長期間を要する肝疾患モデルマウスを新たに作製することができず、3年目に予定しているガスクロマトグラフ質量分析計を用いてNASH発症前後で変化する成分を同定するためのサンプル回収は十分に行えなかった。既に空調工事は終了し、飼養施設が拡張され、使える飼養ケージ数も増加したことから、次年度はマウスの飼養数を予定よりも増やすことでサンプル回収を加速化させ、実験の遅れを取り戻す。
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Research Products
(18 results)