2021 Fiscal Year Research-status Report
Improvement of immune checkpoint inhibition therapy for the treatment of pancreatic cancer
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21K19743
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小林 聡 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (50292214)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和久 剛 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (40613584)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | がん免疫 / 遺伝子発現 / 膵臓がん / 乳酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、膵臓ガンの乳酸産生メカニズムを解明し、その阻害が与えるT細胞への影響を解明することで、免疫チェックポイント阻害療法を奏功させる新たな治療法を開発する点にある。ノーベル生理学医学賞を授与された免疫チェックポイント阻害療法はガン治療に革命をもたらしたが、奏功しないガンも多い。例えば、膵臓ガンは大量に乳酸を分泌することで攻撃してきたT細胞やNK細胞等を不活化するため、同治療法が奏功しない(Brand A (2016) Cell Metabolism)。したがって膵臓ガンの乳酸産生メカニズムを解明し、これを阻害する薬剤を開発すればガン免疫療法の膵臓ガン治療効果を高めるはずである。しかし現時点では、そのような薬剤はまだ開発できていない。 本研究では、膵臓ガンの乳酸産生メカニズムを解明することで、ひいては、その乳酸産生メカニズムを阻害する治療法開発につなげる。解析ターゲットとしては、申請者らが世界に先駆けて発見した転写因子NRF3 (NFE2L3) (Kobayashi A. (1999) J Biol Chem)にフォーカスを当てる。なぜなら申請者らは、NRF3が膵臓がん細胞において乳酸合成酵素LDHAの遺伝子発現を誘導することを発見したためである。そこで、このNRF3-LDHA経路について細胞ないしマウス移植実験を駆使して解明する。この経路の存在が実証された場合は、さらにNRF3阻害剤であるHIV治療薬nelfinavirが膵臓がんの乳酸分泌を抑制することで膵臓がんの免疫回避能を減弱するか検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずNRF3が膵臓がんで高発現していることをガンゲノムデータベースで確認し、NRF3後発現型である膵臓がんが予後不良となることを確認した。さらに乳酸合成酵素であるLDHAとNRF3が正の発現相関を示すことも見出した。NRF3によるLDHA発現誘導機構の存在は、LDHA遺伝子上流にNRF3結合配列であるARE配列が存在することを確認した。次に実験的に、ヒト膵臓がん細胞PANC1ないしPK45H細胞においてsiRNAを用いてNRF3をノックダウンしたところ、LDHA mRNAが有意に発現低下することを見出した。さらにLDHA遺伝子のARE配列にNRF3が直接結合することは、抗NRF3抗体を用いたクロマチン免疫沈降実験により証明した。しかしながら予想外に、NRF3ノックダウンしてもLDHAタンパク質の発現が有意に低下することは現時点では確認できていない。この問題について、現在検討中である。 並行してNRF3によるがん免疫回避機構という仮説を検証するために、膵臓がんにおけるNRF3標的遺伝子をさらにバイオインフォマティクス技術を駆使して解析したところ、ヒッポシグナル伝達系のTAZがNRF3の標的遺伝子であることを見出している。近年、TAZは乳がんにおける免疫回避機構に関わることが報告されているため(Can Res (2018))、新たにNRF3-TAZ経路による乳がんの免疫回避機構についても解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、NRF3が乳がん合成酵素であるLDHA遺伝子の転写を膵臓がん細胞において直接誘導することは確認することに成功したのであるが、予想外にタンパク質レベルの発現に対する作用を見出すことができていない。この要因としては、mRNAからLDHAタンパク質への翻訳にも発現制御機構が存在することを示唆している。あるいはLDHAはハウスキーピング遺伝子であるために、タンパク質としてはきわめて長寿命であるために、NRF3ノックダウンによりLDHA mRNAが低下しても、その効果がタンパク質レベルに反映されにくい可能性も考えられる。現在、この要因について詳細に解析している段階である。 並行して、新たにNRF3-TAZ経路による乳がんの免疫回避仮説についても解析を始めている。上述したように、ヒッポシグナル伝達系のTAZが免疫チェックポイント阻害をもたらすPD-L1遺伝子を誘導することが報告されているためである(Can Res (2018))。すでにNRF3がTAZ遺伝子を直接転写し、TAZタンパク質の発現を誘導することは確認することができている。そこでNRF3-TAZ経路がPD-L1誘導、ならびに細胞傷害性T細胞の攻撃からの回避をもたらすのか、まずは細胞レベルの解析を進める予定である。
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Research Products
(13 results)