2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K19758
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
天野 一幸 群馬大学, 情報学部, 教授 (30282031)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 計算量理論 / 整数複雑さ / 論理関数 / 下界 / 計算機援用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,数学分野において長く未解決となっている様々な難問を,「計算」の視点から捉え直すことで,その困難さを解明し,あるいは,解決への糸口を得ようとするものである.これへ向けて,今年度は,特に以下の2点について成果を得ることができた. 1.与えられた自然数を,数値の1と,加算,乗算,および,括弧を任意に用いて表現するときの,数値1の使用回数の最小値を,その数の整数複雑さと呼ぶ.1950年代に提唱されたこの問題は,そのシンプルさにも関わらず,良い上界,あるいは,下界を求めることは長年の未解決問題となっている.本研究では,これまで知られる最良の上界と下界が,それぞれ,2進数表現と3進数表現を元にしていることに着目し,2進と3進を任意の順番で使用できるとする,混合2-3進数表現を提案し,この表現を用いた整数複雑さについて解析を行った.その結果,平均的複雑さに対する,これまで知られる最良の上界の改良や,整数複雑さの分布についての新たな知見を得ることに成功した.この結果は,国際会議ISAAC2022において発表を行った. 2.論理関数の重要な表現手法の一つである,多項式しきい値表現の複雑さに関する解析を行った.特に,ODD-MAXBIT関数と呼ばれる論理関数を,この形式で表現したときの,係数の絶対値の和に対する下界を求める問題に対して,既知の最良の上界とほぼマッチする下界を証明することに成功した.これは,20年来の未解決問題を解決したものである.証明には,ランダム割り当てと,論理関数の自己帰着性を巧妙に組み合わせた手法を用いており,より広く決定リストの表現長の解明への発展も期待できる.この結果は,電子情報通信学会論文誌に掲載された. これらに加えて,最疎充填問題等いくつかの離散数理的問題に対して興味深い進展が得られるなど,本研究の目的の達成に向けて重要な進展を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主眼である,様々な数学的難問を「計算」の視点から捉えるというアプローチによって,整数複雑さや論理関数の複雑さといったいくつかの重要な問題に対して,進展を与えることができた.また,これらの成果のいくつかは,論文や学会発表を通じて公表することができている.さらには,ここでは述べていないいくつかの問題に対しても,今後の成果につながる予備的な成果が得られており,研究全体として,おおむね順調に進展しているものと判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
数学分野に多く存在する難問に,新たに「計算」の視点からアプローチし,その問題自身への貢献とともに,計算量理論への貢献をも目指すといった本研究の目的に向けて,今後の研究の推進方策は以下の通りとする. これまでの研究で取り扱ってきた,整数複雑さや,論理関数の複雑さ等の問題に加え,離散構造に関する問題等を含めた,より広範な問題群に対する解析を行う.特に,その問題自身へ挑戦することを通じて,難問を難問たらしめている理由についての考察を深めることに重点を置きつつ研究を進める.この際,これまで通り,理論的解析と計算機を用いた解析の2通りのアプローチを柔軟にかつ高度に組み合わせた手法により,問題の難しさの本質的な理解を得ることを目指す. 様々な先端的手法に関する知識の獲得のため,隣接分野の研究会への参加や,高度な専門知識を持つ研究者との交流を積極的に行うものとする.また,得られる成果は,学術論文や学会発表等を通じて積極的に公表し,これを通じて得られるフィードバックも取り入れつつ研究成果の最大化を目指す.
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Causes of Carryover |
発表を行った国際会議が,Covidの影響によりハイブリッド開催となり,リモートでの講演を行った等の理由により旅費に剰余金が生じた.また,購入を予定していた計算サーバについて,他の予算で購入したものが一部流用できることとなったため物品費に剰余金が生じた.これらについては,今年度以降の学会発表に要する経費として,および,計算サーバの計算能力の増強に向けた設備備品費として使用する予定である.
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