2021 Fiscal Year Research-status Report
グリーン関数の求まらない形状の領域における境界要素法
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21K19764
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
飯盛 浩司 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (50638773)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 境界要素法 / S行列 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、測度無限大の境界を有する領域における波動散乱問題を対象とし、その有力な数値解法である境界要素法に関する基礎的な研究を行うものである。特に、測度無限大の境界と散乱体の相互作用を記述するS行列を定義し、これを利用した新しい境界要素法の構築を目指す。 初年度は、解法の構築と基礎的な検討を行う目的で、半無限領域で定義された2次元ヘルムホルツ方程式の境界値問題を対象として研究を実施した。半無限の直線境界による円筒波の反射を、これに沿ったフーリエ積分で表現し、これを円筒波展開することにより必要なS行列が定義できることが分かった。このようにして得たS行列の要素はフーリエ積分で書くことができるが、適切な積分路を選ぶことにより数値的に評価する方法も構築できた。このようにして求めたS行列を利用し、解の境界値を精度良く計算できることが明らかになった。特に、本手法は境界上でインピーダンス境界条件(解とその法線微分の線型結合が与えれられている)が課されている場合にも適用可能であった。 しかしながら、領域内部における解を計算する(いわゆる内点計算)においては、先のS行列を用いた計算を実行すると、遠方において解の精度が著しく悪化することも明らかになった。そこで、内点計算においては、円筒波展開する前の表現を用いて散乱場を計算する必要があることが結論された。 以上、2次元ヘルムホルツ方程式の半無限境界値問題に対する算法の開発が完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」に述べたとおり、境界値を求めるところまでは首尾良く研究が進んだが、内点計算の精度悪化の原因究明に時間を要したことから、当初予定していた動弾性問題に関する研究に着手することができなかった。このことから、やや遅れていると自己評価する。一方で、前述のとおり、問題は既に解決し、動弾性問題に適用する際にも同様の手順を辿れば良いことから、次年度に挽回することが十分に可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って研究を遂行する。すなわち、動弾性問題に対する算法を構築し、得られた知見をもとに導波管を伝播する音響・弾性散乱問題の新しい解法を開発する。さらに、開発した手法を用いてフォノニック導波路などの先進的なデバイスの数値計算を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の蔓延のため、旅費の使用が零であったことに起因する。「次年度使用額」は次年度に開催される国際会議等への出席にかかる費用として使用する予定である。
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